2018年7月21日土曜日

2018年06月うたの日の自作品30首。

「蛍」
ぬばたまのサーバー室に入り込んだ蛍、LEDに醉いたり

「カタツムリ」
春さきは野菜がとても高かったツムちゃんのエサもニンジンばかり

「コンプレックス」
豆腐屋のラッパが届く夕間暮れコンプレックス仕舞って帰る

「喧嘩」
喧嘩したら終わって謝るところまで、途中でひどいことを言うから

「虫」
皮膚打ちて手のひら見れば異種嫌悪を媒介したる虫取り逃がす

「ソックス」
靴下を避妊具みたいに巻きとって足を差し入れてゆく、ソックス

「憎」
容赦なく無知を軽蔑した上で差別を憎む君の横顔

「分」
アルバイトのシフトが二人を分かつまで誓いますここでパン買うことを

「Rock」
友人がある日を境にロックとかロックでないとか言うので頭突き

「生」
めくったらまた痛いのは知っていて精神の生乾きのかさぶた

「自由詠」
枇杷の木も枇杷の木に生(な)る枇杷も濡れそれを啄むカラスも濡れる

「武」
弱いのになにかと威張る武士らしい、占いにしてはリアルな前世

「スニーカー」
森田童子のニュースが出るのに驚いてスニーカー履いて行くにわか雨

「理」
理屈では正しいことを今拒む生き物ふたつ駅はこっちだ

「制服」
制服のきりりときみはこれからも季節を背景に、していてね

「さざなみ色」
先に出た博物館の前の池は初夏のさざなみ色のさざなみ

「ストロー」
ストローでぷっと吹いたら優しくてこんな終わりにちょうどよかった

「蒔」
油断するとどんなものにも蒔絵とかほどこしちゃうのニッポンみある

「山椒」
左右の筋をちぢめのばしてゆつくりと山椒魚は戰火を歩む

「鰻」
逃げ切った鰻の家族は寄り添ってでも嗅覚は最後が分かる

「スミレ」
本気ではないのでしょう? と微笑んで少しおびえて優しいスミレ

「省」
省略をしてはならないきみといる時間のひとつ、ひとつ、ひとつ、を

「場」
こういうところお互い好きじゃないけれど記憶のためにお台場デート

「麦」
雨の日に水鉄砲で遊びいる少年の麦わら帽子濃き

「厳」
分割されていれば百円高くなる厳しいカマンベールの悩み

「包丁」
沈黙の母のとことこ包丁の絆は切れやすいから切らぬ

「腹筋」
腹筋の話というかその周りのルノワール的な、男だけどね

「小」
小さき身のコントラバスを背負う人カブトムシの脚の付け根の匂い

「垂」
垂れている驚くことにぼくたちは空に向かって垂れてるいのち

「四角」
にんげんのルールはいつも四角くて尖ったところにまたあの人だ

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