2018年7月7日土曜日

2016年06月の67首。五音短歌10首。

寝そべれば校舎の上がぜんぶ青、ああ青春ってそういうことだ

田舎なる午後のガソリンスタンドの空の一筆、あのあたり巣が

顔に色をつけて出かける性につき嘘というなら最初から嘘

可愛さと奇形のあわい、口あけてすべてを見上げたるコーギーの

世阿弥
父もまたみどりの目もてこのわれを見たか自分によく似たる子を

書類ケースに入る猫(2首)
あいまいなかたちのゆえにだいたいは入(はい)れるとおもいじじつ入(はい)れる

狭いところにわたしがいるのではなくて事物がわたしに触れたがるのだ


ロック解除のスライドと同じ操作ゆえ音楽がふと爆音となる

ランドセルの二人のあとに紋黄蝶いろにつられて追いかけて止む

ボーイッシュな眼鏡少女と見紛える少年がいてちらちら見たき

AIがそれは名曲ではないと判定するが口笛で吹く

カラスっぽくないのでたぶんテバルディ、日本はカルラスでもよかろうに

丘の向こうきのこのような入道が鮮やかに立つ6月なのに

無人島で船に向かって呼ぶような切実さにて鳴く籠の鳥

気の狂いはじめとおわりは色彩が変わるよね、そうそう、ってなるか!

比較的ありがちな未来に落ち着いて紙とビニルを引き剥がしおり

深刻で切実なことを匿名の日記に記しきみは消えゆく

横書きは右へ縦書きは左へとそしてどちらも下へと向かう

水素水を手にとっている主婦がいてスーパーで無力噛みしめるわれは

仕事用のハイエースにて駆けつけてくれて白象王(びゃくぞうおう)に乗るきみ

咲きすぎてくたれた花の濡れている歩道美しさはげに刹那

頭がもう真っ青になっちゃいましたってブルースクリーン的なことかね

ここがきみのねぐらであるか薄暗き闇なる影が小さき威嚇

ファムファタルのその後外には雨に満ち溺れることで紫陽花うれし

無駄だ地球滅ぼそうともわれわれは淵底(えんでい)からの代弁なのだ

無声音のくしゃみのきみはまだ若く理解できないのはありえない

人間はほんとうにこわくないかしら狐のように首をかしげて

森の中に木を隠したる寺山の結局なにが隠れただろう

雨の夜を車が走る音聞こゆそのオノマトペ決めかねながら

今を一緒に生きてくれたら嬉しいというのは低くて高いのぞみか

人類の歴史はまさかさびしさの歴史じゃないね早めに眠る

かわいいと言われてマジのイヤな顔もかわいいことを横が見ている

やい宇宙、お前に投げ込まれたここでさびしさを捕食して生きてやる

節の少ない鉄のブランコガチャガチャと縄のそれとは別物として

ちゃんと命と向き合ってないと突つきたる鳥よお前は雄だったよな

ポリューションのようなり生は浴室で洗い落とせぬかたまり濡れて

流行水を家内が買ってきたという友よアクィナスを嫁に読ますな

弟子をみて師匠がわかるもともとのやさしさをきみは自覚していて

あれ今日はつかれたぼくになつかしいポールサイモンの軽い音楽

いじめという無邪気な生の否定うけて夜道、黄泉路(よみぢ)になるまでくらし

猫はもう三世の因果を知っていて主人の来世を眺めては寝る

悲憤慷慨上戸の男駅前で明るい夜にも怒りつつ寝る

ノート手にハプスブルク家あったよねー懐かしいよねと笑う少女(おとめ)ら

コンテンツになってしまった彼のため彼女もいつか読者となりぬ

フリッパーズギターを少年ナイフから重出立証したき休日

ダルい体をごまかすように元気よく階段をあがる、ASIMOっぽいぞ

起きたればアップデートしてぼくがいる淡めの恋は消去されにき

百年に、いな千年に知己を得るまでこの歌のさひしきままぞ

呼吸するペースできみと歩きいてそのペースにてずれはじめゆく

褒賞と罰のあいだにぼくたちは遊んでいたよ、ここでおわかれ

ファイティングニモとジェラシックパークのシュミレーションをディスクトップに

生きるとは野暮なんであるやさしさの余分分だけ現世に残る

あめふればわれらはくらげ水の中かさを広げて駅を出てゆく

もうエヴァに乗りたくないときみは言う、乗れないわれはきみを励ます

感動で目を濡らしたら症状も少し楽にはなる心とは

WGIPってウェスト、ゲート、池袋、パーク?って、お前頑張るなぁ最後まで

もうどこにも行かない男とずっとそばにいてほしいわけではない女

烈々と生命力を注ぎ込んでオレゆえにオレは幸福な顔

宿命を断ち切るときは難が出ると仏教の法らしきを憶(おも)う

トレイシーチャップマンとかブルーとか知らないきみだ知る要もない

てんかふの匂いのせいでそういえばキツめの顔と思わなかった

精神の首輪のはなし、ちぎるとき首輪のつよさに負けたれば死ぬ

昨日食べたものも忘れて明日(あす)食べるものわからぬ、それはたしかに

この歌も三時のおやつ、甘すぎず固すぎずそして少しのおしゃれ

ニャーゴ水がなんなのかよくわからないいつかは終わる曲を聴いてる

目線さえ合わせなければ逃げられる逃げているのをみているひとみ

わかりあうためにはあらぬならべゆく文字列のきみときどきさびし


五音短歌

「蜜」
「秘密」の字を「蜜」にするその技に蜂はもうぼくである

「川」
この細い川に棲む河童(かわらわ)のおおらかっぽくなさそう

「不」
今思えばオトナっていえるかね若いだろ峰不二子

「逆」
逆回しの地球の川の水、海を吸うだが減らぬ

「嵐」
窓外は横なぐる嵐にてこの家はどこへ行く

「都会」
都会にて指を折るこんにちは、さようなら、さようなら

「冠」
落ちそうな冠を落とさずにうなづけばそれっぽい

「CD」
ネットから焼いたのもあれだけどアーティストまで不明

「資格」
現代を生きるのに要る資格持っているような顔

「蚊」
夏を避けて早い派と遅い派の蚊の進化はじまりぬ

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