「15時」
15時にぱかっと開く口があり投げ入れたものを秘密にしたい
「春一番」
春一番とすれ違うとき耳元でよういどんっておれも聞こえた
「三」
とろろご飯でもうしあわせな男にはトロイカで追いかける愛なし
「暖」
川のおもてを水鳥ひとつ浮いていて暖かき春の空腹な壺
「館」
窓からの景色は海じゃないのかよ旅館の駐車場に空きあり
「留」
この声を消したくないが保存すれば意味が変わってしまう留守電
「役」
汚いものを見るような目で見られたる役目差別に似て男ゆく
「ぐちゃぐちゃ」
ぐちゃぐちゃの世界のままにしてるからA型の線は薄いよ、神は
「ノック」
ノックする時までは居て呼びたればサイレントレターを残してK氏
「自由詠」
糾えぬ縄のごとくに落ちてゆくきみに巻きつく固い蛇です
「忘」
忘却と言ったってほら浴槽を湯があふれればあふれるものを
「次」
最善はおっかないので次善ならまあ良しとする凪、しかし凪
「バター」
愛知だから味噌の好みはわかるけどピーナツバターもこだわりますか
「アドレス」
メールすればきみに言葉は届くけどたたずむきみのアドレスを思う
「初句切れ」
柳下鬼女、顔の部分の欠落も不可避のような狂気かなしみ
「桃」
発熱し学校を休む少(わか)き日のゼリーの桃だ今宵食べいる
「暦」
運命とたたかった日々がありましてずっと暦の下にいました
「元」
どうせまた元鞘だろう三年連続5回目の期待する身にもなれ
「レーズン」
飼い鳥には休日の味、レーズンパンのレーズンのない白きをつつき
「羊」
体重の話でなくて人生は羊頭狗肉おなかをつかむ
「声」
声がする、電気を消して寝るころにきみの本音のようなうめきの
「性格」
いい性格してるじゃねえかとほめられて喜んでたらへんな空気だ
「ハードル」
ハードルを飛び越えるときなんとなくプリマドンナの内面を見ゆ
「引っ越し」
アの字から始まる引っ越し業者ですすぐに目に付くきみはぼくには
「掃除」
水槽の掃除のためのヌマエビが空走るように泳いで楽し
「愛」
コンディショナーもリンスも使わないけれどアンコンディショナルラブとも言えぬ
「例」
例によってぼくはお酒を飲みすぎてきみは困った顔でほほえむ
「占」
ラッキーなアイテムはずばりヘルメット目の前に星がきらめけば吉
「昨」
一昨日(おととい)から夢が続いてるんだけどほっぺたつねって痛くないけど
「新」
手を繋がなかったしかし優しかったその町はまだ新しかった
「B」
俺たちはB級じゃないビクトリーのBだと言った彼を今日好き
2017年4月8日土曜日
2017年4月2日日曜日
2015年03月作品と雑感。
若い頃、ある著名な歌人と会う機会があり、その何次会かの終わりに、「またいつかどこかで、短歌を続けていたら会うこともあるでしょう」と言われ、その後、私は短歌をやめた。
何年かたって、私はふたたび短歌を作るようになり、ツイッターでもぐずぐずと短歌を作っている。その著名な歌人とは会っていない。たぶん会っても、私のことは覚えていまい。
いま、ツイッターで、プロフィールに短歌と書かれている人を主にフォローしているが、ほとんどの方と会うことはないのだろう。会うことのない方の短歌を、お互いに読むような時代だ。
今年度も、お互いの何かがすれ違えれば、さいわいのように思います。なんとなく、新年度のあいさつっぽく(笑)。
自選など。
忘却があるではないか脳というたんぱくよ君をいそいで溶かせ
液体がやがて氷になるように妄想はかたく冷気を放つ
芸術は人の時間を吸いながらひかりのようなもの帯びてゆく
回想録に誠意と弁護ふくまれていづれを読みたきかは時により
憂鬱な土星の光避(さ)けるため君はカーテンからぼくを見る
帯域(レンジ)ではずっと幸(さいわ)いなる日々の今宵も豚バラ色の人生
ぱっとしない僕の4年はおいといて聞きたくはある君の震災
逃げ切れたことのさびしさ鼻歌の鼻先とともに空気が冷やす
何年かたって、私はふたたび短歌を作るようになり、ツイッターでもぐずぐずと短歌を作っている。その著名な歌人とは会っていない。たぶん会っても、私のことは覚えていまい。
いま、ツイッターで、プロフィールに短歌と書かれている人を主にフォローしているが、ほとんどの方と会うことはないのだろう。会うことのない方の短歌を、お互いに読むような時代だ。
今年度も、お互いの何かがすれ違えれば、さいわいのように思います。なんとなく、新年度のあいさつっぽく(笑)。
自選など。
忘却があるではないか脳というたんぱくよ君をいそいで溶かせ
液体がやがて氷になるように妄想はかたく冷気を放つ
芸術は人の時間を吸いながらひかりのようなもの帯びてゆく
回想録に誠意と弁護ふくまれていづれを読みたきかは時により
憂鬱な土星の光避(さ)けるため君はカーテンからぼくを見る
帯域(レンジ)ではずっと幸(さいわ)いなる日々の今宵も豚バラ色の人生
ぱっとしない僕の4年はおいといて聞きたくはある君の震災
逃げ切れたことのさびしさ鼻歌の鼻先とともに空気が冷やす
この壁に朝の光がぶつかっておおこの白はユトリロっぽし
ジッパーのタグあご下に揺れていて顔面だけを海にさらして
月のある世界であれば泣く夜も意味のあるべき景色とはなる
毎年の数千人の事故死者の今年の該当者に来たる春
かもしれぬそうかもしれぬ溢れいる明るき春のひかりはなみだ
抱えたる矛盾は多いほどよけれ春の午後腹ごなしに歩く
股下の裾ながきパジャマ踏みながら廊下を歩くふと奉行めく
恋心は無用の欲といいながらキックペダルを二度三度踏む
ボロノイ図で分けられてゆくぼくたちのかつて濃度で決まりし紲(きづな)
順当に役者も客も老いてゆく観劇にいて桜が不変
つくしんぼ斜面にわっと伸びていて威張るなあ若さは柔らかさ
人類の最後のUMAとして神、今日までは発見されず
明かり消してまだしばらくは存在があるらしい闇に溶けてゆく音
一年に一週間の満開の生きててよかったような桜
2017年4月1日土曜日
2015年03月の62首
表情に狂気がもれていないかと鏡を見ずにいられぬ狂気
旅を終えその運命を見つけよと羅列している単語が光る
忘却があるではないか脳というたんぱくよ君をいそいで溶かせ
この町の猫には猫の路地があり繁華街あり禁止区域あり
芸術はやっぱり狂気、さまざまに角度を変えて普通をさぐる
液体がやがて氷になるように妄想はかたく冷気を放つ
半分ずつ薄らいでいく遺伝子のおもかげとして生きるわれわれ
ひと枝の梅と菜の花受け取って春らしくそしてさよならなのだ
芸術は人の時間を吸いながらひかりのようなもの帯びてゆく
胸もとで小(ち)さく手を振り通学の乗換えでふたり孤(こ)の顔やめる
美しきテロリスト譚として読めるナウシカかつてと紙一重だが
脳は水、まどろめば思考分子らがブラウン運動してまとまらず
回想録に誠意と弁護ふくまれていづれを読みたきかは時により
憂鬱な土星の光避(さ)けるため君はカーテンからぼくを見る
妬みとは認めたうえで粒ほどに深い穴から救い出さねば
帯域(レンジ)ではずっと幸(さいわ)いなる日々の今宵も豚バラ色の人生
カゼクサの敷き詰められた土手坂にもうあきらめて大(だい)に空(そら)抱く
ぱっとしない僕の4年はおいといて聞きたくはある君の震災
こんなかれんな花の名前も知らないで、いや死ぬ時は知ることわずか
生きものの宿命はじつに厳しくて肩代わりなどかつてあらざる
逃げ切れたことのさびしさ鼻歌の鼻先とともに空気が冷やす
この壁に朝の光がぶつかっておおこの白はユトリロっぽし
ユーフクの字が汚くてコに読みき、たしかに似てはいるふたつにて
ジッパーのタグあご下に揺れていて顔面だけを海にさらして
月のある世界であれば泣く夜も意味のあるべき景色とはなる
ただ一個一度ポッキリなる脳に酒かけて少し壊しては寝る
毎年の数千人の事故死者の今年の該当者に来たる春
まだ寒い公園の夜、我慢している若い二人の横をば過ぎる
かもしれぬそうかもしれぬ溢れいる明るき春のひかりはなみだ
面構えはかなわぬわいやい生きざまも休ませている休日に会い
手に入れて世界はそれを失って未来の為に空けつつあらん
男根のような車を乗り換えて少女のような車で来たる
本心をボットに言わせてるうちにいつしかわれがボットとなりぬ
雨音もあるものだから音楽のラジオは消して沈みつつ寝る
入滅といううつくしき語にいたる死、というよりも生を思いつ
抱えたる矛盾は多いほどよけれ春の午後腹ごなしに歩く
語るしか出来ぬウィトゲンシュタインの機知待ちて流し読む論理論
レールから外れた為にレールへと飛び込む人ぞ、水なきプール
シンボルを符丁と訳すその距離をズブズブ思い本論いずこ
欧米の言葉にできぬ個人主義のさびしさこそが神を造りき
浴槽の思念はいつか大疑へといたるか、大悟は遠き水面
股下の裾ながきパジャマ踏みながら廊下を歩くふと奉行めく
恋心は無用の欲といいながらキックペダルを二度三度踏む
死ぬときは枯れたく思う人界に求められねば七のあたりに
使いかけの手帳の棚のいつかまたそこから始めるべき生ならぶ
ボロノイ図で分けられてゆくぼくたちのかつて濃度で決まりし紲(きづな)
神様の名前でみんなばらばらの神様をみる、いのりはかがみ
人間の幸福がひどくねたましく片手で窓にぶら下るなり
順当に役者も客も老いてゆく観劇にいて桜が不変
布団から起き上がるとき身体(しんたい)もついて来てるかつい振り返る
ゆっくりと進める恋の「ゆっくり」がどうも加速化してる気がする
口にすれば消え失(う)すような幸福で生きている君、捨てゆく言葉
「悲愴」とう楽曲のごとかなしみは賽の河原で客体となる
コンテクストがハイ過ぎるネット日本文、長くて細くて鋭いうなぎだ
ホロスコープは時の見張りの意味らしく見張っているのは人かそれとも
つくしんぼ斜面にわっと伸びていて威張るなあ若さは柔らかさ
終わったよ終わっただよと心地よい勝利して君に次が見えてる
人類の最後のUMAとして神、今日までは発見されず
明かり消してまだしばらくは存在があるらしい闇に溶けてゆく音
この部屋で配色濃厚なるものを食べる食べたら早めに帰る
胸の閊(つか)え涙によって流るるか嬉しきときの滂沱はあつし
一年に一週間の満開の生きててよかったような桜
旅を終えその運命を見つけよと羅列している単語が光る
忘却があるではないか脳というたんぱくよ君をいそいで溶かせ
この町の猫には猫の路地があり繁華街あり禁止区域あり
芸術はやっぱり狂気、さまざまに角度を変えて普通をさぐる
液体がやがて氷になるように妄想はかたく冷気を放つ
半分ずつ薄らいでいく遺伝子のおもかげとして生きるわれわれ
ひと枝の梅と菜の花受け取って春らしくそしてさよならなのだ
芸術は人の時間を吸いながらひかりのようなもの帯びてゆく
胸もとで小(ち)さく手を振り通学の乗換えでふたり孤(こ)の顔やめる
美しきテロリスト譚として読めるナウシカかつてと紙一重だが
脳は水、まどろめば思考分子らがブラウン運動してまとまらず
回想録に誠意と弁護ふくまれていづれを読みたきかは時により
憂鬱な土星の光避(さ)けるため君はカーテンからぼくを見る
妬みとは認めたうえで粒ほどに深い穴から救い出さねば
帯域(レンジ)ではずっと幸(さいわ)いなる日々の今宵も豚バラ色の人生
カゼクサの敷き詰められた土手坂にもうあきらめて大(だい)に空(そら)抱く
ぱっとしない僕の4年はおいといて聞きたくはある君の震災
こんなかれんな花の名前も知らないで、いや死ぬ時は知ることわずか
生きものの宿命はじつに厳しくて肩代わりなどかつてあらざる
逃げ切れたことのさびしさ鼻歌の鼻先とともに空気が冷やす
この壁に朝の光がぶつかっておおこの白はユトリロっぽし
ユーフクの字が汚くてコに読みき、たしかに似てはいるふたつにて
ジッパーのタグあご下に揺れていて顔面だけを海にさらして
月のある世界であれば泣く夜も意味のあるべき景色とはなる
ただ一個一度ポッキリなる脳に酒かけて少し壊しては寝る
毎年の数千人の事故死者の今年の該当者に来たる春
まだ寒い公園の夜、我慢している若い二人の横をば過ぎる
かもしれぬそうかもしれぬ溢れいる明るき春のひかりはなみだ
面構えはかなわぬわいやい生きざまも休ませている休日に会い
手に入れて世界はそれを失って未来の為に空けつつあらん
男根のような車を乗り換えて少女のような車で来たる
本心をボットに言わせてるうちにいつしかわれがボットとなりぬ
雨音もあるものだから音楽のラジオは消して沈みつつ寝る
入滅といううつくしき語にいたる死、というよりも生を思いつ
抱えたる矛盾は多いほどよけれ春の午後腹ごなしに歩く
語るしか出来ぬウィトゲンシュタインの機知待ちて流し読む論理論
レールから外れた為にレールへと飛び込む人ぞ、水なきプール
シンボルを符丁と訳すその距離をズブズブ思い本論いずこ
欧米の言葉にできぬ個人主義のさびしさこそが神を造りき
浴槽の思念はいつか大疑へといたるか、大悟は遠き水面
股下の裾ながきパジャマ踏みながら廊下を歩くふと奉行めく
恋心は無用の欲といいながらキックペダルを二度三度踏む
死ぬときは枯れたく思う人界に求められねば七のあたりに
使いかけの手帳の棚のいつかまたそこから始めるべき生ならぶ
ボロノイ図で分けられてゆくぼくたちのかつて濃度で決まりし紲(きづな)
神様の名前でみんなばらばらの神様をみる、いのりはかがみ
人間の幸福がひどくねたましく片手で窓にぶら下るなり
順当に役者も客も老いてゆく観劇にいて桜が不変
布団から起き上がるとき身体(しんたい)もついて来てるかつい振り返る
ゆっくりと進める恋の「ゆっくり」がどうも加速化してる気がする
口にすれば消え失(う)すような幸福で生きている君、捨てゆく言葉
「悲愴」とう楽曲のごとかなしみは賽の河原で客体となる
コンテクストがハイ過ぎるネット日本文、長くて細くて鋭いうなぎだ
ホロスコープは時の見張りの意味らしく見張っているのは人かそれとも
つくしんぼ斜面にわっと伸びていて威張るなあ若さは柔らかさ
終わったよ終わっただよと心地よい勝利して君に次が見えてる
人類の最後のUMAとして神、今日までは発見されず
明かり消してまだしばらくは存在があるらしい闇に溶けてゆく音
この部屋で配色濃厚なるものを食べる食べたら早めに帰る
胸の閊(つか)え涙によって流るるか嬉しきときの滂沱はあつし
一年に一週間の満開の生きててよかったような桜
2017年3月12日日曜日
2017年02月うたの日自選と雑感。
歌会をやると、選のあとに作者が自分の作品について述べる時間があって(ないところもあるだろうが)、それを解題(かいだい)と呼んだりする。
最近になって知ったのだが、この解題は、地方によって好まれたり好まれなかったりするらしい。なんでも、関西はあまりしない傾向、東京はわりとする傾向があるとか。ほんまかいな。(そして他の地方はどうだろう?)
わからなくはない。関西は、ネタばらし、というか、自分の笑いどころを自分で説明するのがとても野暮にみえるのだろう。
たぶんこれは、短歌の独立性と自意識の比重が生み出す現象なんだろう。
解題のレイヤをほどくと、いくつかのレベルグラデーションがあるように思う。
1、その歌の背景となった出来事や、気持ちを語りたい場合。
2、自分がうたいたいことが、ちゃんと表現出来ているかどうかの技術検証。
3、自分のねらいはともかく、この歌が到着している地点はどこかを共に考えたいケース。
4、独立した短歌表現として、作者の立場を離れて批評するスタンス
短歌を語るときによく将棋をテルヤは持ち出すのだが、解題というのは、将棋の感想戦に似ている。勝ち負けはあるものの、よりよき将棋を指すために、ここはどう指すべきだったか、この時に何を考えていたか、を語りあうあのシーンは、将棋文化の実はいちばんカッコイイところだと思うが、それはさておき。
だから、感想戦で、自分がどんなにこの将棋に勝ちたかったか、どういう勝ち方をしたかったか、というのを力説するのは、やっぱり野暮な場合はある。さりとて、ここのこの一手はどういう狙いで? と訊ねても、ご想像におまかせします、ばっかりだと、それもそっけない場合がある。
盤上の駒の結果がすべてだ、作者の意図なんか雑音だ、という考えも、あることはあるんだけどね。
表現って、自分の一部を切り取って見せる行為だから、やっぱり自意識はあるし、負けて感想戦するような脳の心肺停止状態から防衛したくはなるんだよね。
(これ書いたあと、自選ってやりにくいぞ)
自選。
「蟹」
われわれの祖先が蟹でなくたって右か左についかたよるよ
「福」
マンサクの花が咲いたらもういないあの老人は福の神かも
「昔話」
100年後昔話になるために宝を集めておこうぜ友よ
「宇宙」
カウンターにいつもの宇宙人がいて宇宙の愚痴が長い金曜
「ピクルス」
われがまだまったきピクルスになる前にビンの中より見る無情の世
「起」
起きてるよ話もちゃんと聞いてるよ⋯⋯、⋯⋯、ひよこ。(ひよこ?)
「サーカス」
サーカスの帰り途(みち)なんとぼくたちはドラムロームのない生を生(い)く
「甥/姪」
遅刻ばかりしている姪の通学のコースは鶏(とり)、犬、犬、窓の猫
「くじら」
肺呼吸で海に棲む業の引き換えに死後鯨骨は宇宙となりぬ
「そっと」
20万年そっと彼らを見ていたがあと10万年様子をみよう
「牛」
世間的にはしずかで優しい彼だけど牛の顔していることがある
「タンバリン」
チキチキチャ、チキチキチャリチャ、きみの部屋会社で嫌なことがある日の
最近になって知ったのだが、この解題は、地方によって好まれたり好まれなかったりするらしい。なんでも、関西はあまりしない傾向、東京はわりとする傾向があるとか。ほんまかいな。(そして他の地方はどうだろう?)
わからなくはない。関西は、ネタばらし、というか、自分の笑いどころを自分で説明するのがとても野暮にみえるのだろう。
たぶんこれは、短歌の独立性と自意識の比重が生み出す現象なんだろう。
解題のレイヤをほどくと、いくつかのレベルグラデーションがあるように思う。
1、その歌の背景となった出来事や、気持ちを語りたい場合。
2、自分がうたいたいことが、ちゃんと表現出来ているかどうかの技術検証。
3、自分のねらいはともかく、この歌が到着している地点はどこかを共に考えたいケース。
4、独立した短歌表現として、作者の立場を離れて批評するスタンス
短歌を語るときによく将棋をテルヤは持ち出すのだが、解題というのは、将棋の感想戦に似ている。勝ち負けはあるものの、よりよき将棋を指すために、ここはどう指すべきだったか、この時に何を考えていたか、を語りあうあのシーンは、将棋文化の実はいちばんカッコイイところだと思うが、それはさておき。
だから、感想戦で、自分がどんなにこの将棋に勝ちたかったか、どういう勝ち方をしたかったか、というのを力説するのは、やっぱり野暮な場合はある。さりとて、ここのこの一手はどういう狙いで? と訊ねても、ご想像におまかせします、ばっかりだと、それもそっけない場合がある。
盤上の駒の結果がすべてだ、作者の意図なんか雑音だ、という考えも、あることはあるんだけどね。
表現って、自分の一部を切り取って見せる行為だから、やっぱり自意識はあるし、負けて感想戦するような脳の心肺停止状態から防衛したくはなるんだよね。
(これ書いたあと、自選ってやりにくいぞ)
自選。
「蟹」
われわれの祖先が蟹でなくたって右か左についかたよるよ
「福」
マンサクの花が咲いたらもういないあの老人は福の神かも
「昔話」
100年後昔話になるために宝を集めておこうぜ友よ
「宇宙」
カウンターにいつもの宇宙人がいて宇宙の愚痴が長い金曜
「ピクルス」
われがまだまったきピクルスになる前にビンの中より見る無情の世
「起」
起きてるよ話もちゃんと聞いてるよ⋯⋯、⋯⋯、ひよこ。(ひよこ?)
「サーカス」
サーカスの帰り途(みち)なんとぼくたちはドラムロームのない生を生(い)く
「甥/姪」
遅刻ばかりしている姪の通学のコースは鶏(とり)、犬、犬、窓の猫
「くじら」
肺呼吸で海に棲む業の引き換えに死後鯨骨は宇宙となりぬ
「そっと」
20万年そっと彼らを見ていたがあと10万年様子をみよう
「牛」
世間的にはしずかで優しい彼だけど牛の顔していることがある
「タンバリン」
チキチキチャ、チキチキチャリチャ、きみの部屋会社で嫌なことがある日の
2017年02月うたの日自作品の28首
「蟹」
われわれの祖先が蟹でなくたって右か左についかたよるよ
「二」
人類が隠れたような朝だった、もう二度と無視を誤魔化すものか
「福」
マンサクの花が咲いたらもういないあの老人は福の神かも
「昔話」
100年後昔話になるために宝を集めておこうぜ友よ
「宇宙」
カウンターにいつもの宇宙人がいて宇宙の愚痴が長い金曜
「続」
AIの代返機能使わずに(?)二人のやりとりえんえん続く
「積」
かなしみがわれのジェンガを抜いてゆきけっこうすごいスカスカよほら
「腰」
腰から下がキャタピラのロボを選ぶのでごっこ遊びも案の定不利
「ピクルス」
われがまだまったきピクルスになる前にビンの中より見る無情の世
「自由詠」
屈託のガジュマルなれど本土では少し寒くて屏風になれぬ
「起」
起きてるよ話もちゃんと聞いてるよ⋯⋯、⋯⋯、ひよこ。(ひよこ?)
「サーカス」
サーカスの帰り途(みち)なんとぼくたちはドラムロームのない生を生(い)く
「甥/姪」
遅刻ばかりしている姪の通学のコースは鶏(とり)、犬、犬、窓の猫
「キス」
最後のはキスというより口づけというより接吻だったふたりは
「北海道」
山の幸から海の幸まで一本道の美しい人を拒みたる景
「告白」
言ひ分ぢやあ人殺しには殺人を描けるわけだ。⋯⋯實を言ふとね、
「ルビ」
声に出して読むくせに漢字読めなくてそのたびにわれはどうもルビおです
「ダンス」
えじゃないかええじゃないかとこの先もはじまるだろう、隠れて踊れ
「くじら」
肺呼吸で海に棲む業の引き換えに死後鯨骨は宇宙となりぬ
「抱」
抱きにけり、東京駅の改札のさわやかな見送りの予定が
「任」
責任ときみは言うけどトランポリンみたいなものよ、それとも落とす?
「そっと」
20万年そっと彼らを見ていたがあと10万年様子をみよう
「古」
フィラデルフィアの中華街なんか来た日には言わずにいれぬ古豆腐屋と
「柱」
⋯⋯なんか、意識があるぞ解体前に大黒柱でなくなるわれに
「牛」
世間的にはしずかで優しい彼だけど牛の顔していることがある
「焦」
戦ったから深まった人生のまだ先があるけど焦らない
「タンバリン」
チキチキチャ、チキチキチャリチャ、きみの部屋会社で嫌なことがある日の
「インフルエンザ」
インフルで無念だ不実なる恋の報いのごときこの発熱が
われわれの祖先が蟹でなくたって右か左についかたよるよ
「二」
人類が隠れたような朝だった、もう二度と無視を誤魔化すものか
「福」
マンサクの花が咲いたらもういないあの老人は福の神かも
「昔話」
100年後昔話になるために宝を集めておこうぜ友よ
「宇宙」
カウンターにいつもの宇宙人がいて宇宙の愚痴が長い金曜
「続」
AIの代返機能使わずに(?)二人のやりとりえんえん続く
「積」
かなしみがわれのジェンガを抜いてゆきけっこうすごいスカスカよほら
「腰」
腰から下がキャタピラのロボを選ぶのでごっこ遊びも案の定不利
「ピクルス」
われがまだまったきピクルスになる前にビンの中より見る無情の世
「自由詠」
屈託のガジュマルなれど本土では少し寒くて屏風になれぬ
「起」
起きてるよ話もちゃんと聞いてるよ⋯⋯、⋯⋯、ひよこ。(ひよこ?)
「サーカス」
サーカスの帰り途(みち)なんとぼくたちはドラムロームのない生を生(い)く
「甥/姪」
遅刻ばかりしている姪の通学のコースは鶏(とり)、犬、犬、窓の猫
「キス」
最後のはキスというより口づけというより接吻だったふたりは
「北海道」
山の幸から海の幸まで一本道の美しい人を拒みたる景
「告白」
言ひ分ぢやあ人殺しには殺人を描けるわけだ。⋯⋯實を言ふとね、
「ルビ」
声に出して読むくせに漢字読めなくてそのたびにわれはどうもルビおです
「ダンス」
えじゃないかええじゃないかとこの先もはじまるだろう、隠れて踊れ
「くじら」
肺呼吸で海に棲む業の引き換えに死後鯨骨は宇宙となりぬ
「抱」
抱きにけり、東京駅の改札のさわやかな見送りの予定が
「任」
責任ときみは言うけどトランポリンみたいなものよ、それとも落とす?
「そっと」
20万年そっと彼らを見ていたがあと10万年様子をみよう
「古」
フィラデルフィアの中華街なんか来た日には言わずにいれぬ古豆腐屋と
「柱」
⋯⋯なんか、意識があるぞ解体前に大黒柱でなくなるわれに
「牛」
世間的にはしずかで優しい彼だけど牛の顔していることがある
「焦」
戦ったから深まった人生のまだ先があるけど焦らない
「タンバリン」
チキチキチャ、チキチキチャリチャ、きみの部屋会社で嫌なことがある日の
「インフルエンザ」
インフルで無念だ不実なる恋の報いのごときこの発熱が
2017年3月5日日曜日
2015年02月作品と雑感。
馬の骨、という言葉は、煮ても焼いても食えない、出汁にもならない、というところから来ているそうだが、検索するとあるみたいね、馬骨の出汁。
短歌というのを、けっきょく、どこに落ち着かせたいのか、なのだろうね。目的というか、ゴールというのか。
芸術の本質の一つに、永遠性への希求、というのがあるのは確かで、この瞬間を、永遠たらしめたい、という気持ちから生まれる。それは、景色だったり、感情であったり。
芸術の本質論まで遡ると、話が長くなるな。やめよう。
短歌のゴールは、この気持ちを書き留めたい、みたいなところから、忘我させる表現に出会って、自分もうまくなってそういうのを作りたい、とか、それを褒められたい、とか、そういう忘我を提供したい、とか、短歌のかたちで自分を表現したいとか、自分を残したい、とか、あらゆる事象を定型にする挑戦に取り組みたいとか、真実や救いのようなものと向き合いたいとか、定型表現そのものの幅を広げていきたいとか、誰もしたことのない表現を作りたいとか、この表現が生み出す場で、人とつながりたい、とか、他にやることがない、とか。
ツイッターで書くわけだから、見せたくないってことではない。表現はすべて承認欲求という考えかたもあるけれども、承認されるかどうか、反応をみたい、というのもあるようだ。現在地を知りたい、という欲求。これは、ちょっと承認欲求と違う。
先日、歌会の得票はポピュリズムだと書いたが、もっと以前には公約数だと書いてもいて、いまそれは中央値(メジアン)を知る行為なのかな、とも思う。
山登りで言うと、ガチで数千メートル級の山をクライミングしたい人と、何合目かまで車で上がって、その辺を散歩したい人もいて、そういう感じに短歌のゴールもある。
自分がどこにいて、どのゴールを行くつもりなのか。他の人はどこにいて、どのゴールを目指しているんだろう。
自選など。
人間のごみを集めてあたたかきミノムシの蓑をずっと見ている
歩くとき詩は涌きやすく足裏(あなうら)にそういうつぼがあるのだヒトは
笹紅をあげたき人であったよと言ってからそんな気をもっていた
人界の苦労を忘れ工場の裏の畑で花を笑む母
時間では心は年をとらざれば心ならざるものばかり老(ふ)く
新しいもの建つために壊れゆき壊されていく側から見おり
人間の入れぬデッドスペースで足突き出して猫がくつろぐ
人間一匹食っていけないことなんてないのだ闇は一寸の先
あまりにも悲しい夢は思い出せずやさしき脳が隠しておりぬ
あのように目を当ていれば男とは一年くらい狂うていたる
どのように生きてもいいと言われたらつらいな、水から遠いスイセン
酔いたればトイレが近くこの国にひろく立小便せしか忠敬
ぎこちないフォームでえいっ遠投す、目的観の低さが不幸
背を反って首かたむけて見つめたる君の景色を時々おもう
子のあらば外から帰りくるたびにかお包みたし耳珠(じじゅ)に触れつつ
悔しいがげんこつを目に当てて泣くそんなしぐさをするわけにいかず
じゃがいもが湯でほどけゆくそれまでにいやその後で大事な話
生きるとはかたちが変わることなので裸体の傷の君たしかなる
この場所をリーフィーアイランドと呼ぼう観葉の鉢数個だけれど
公園の低いベンチは流れゆく時間から少し離れて在らん
きはちすが君の背丈を残しつつ君を失う夢をみていた
とこしなえに名の残ることなきわれに今年の梅が咲きそめている
短歌というのを、けっきょく、どこに落ち着かせたいのか、なのだろうね。目的というか、ゴールというのか。
芸術の本質の一つに、永遠性への希求、というのがあるのは確かで、この瞬間を、永遠たらしめたい、という気持ちから生まれる。それは、景色だったり、感情であったり。
芸術の本質論まで遡ると、話が長くなるな。やめよう。
短歌のゴールは、この気持ちを書き留めたい、みたいなところから、忘我させる表現に出会って、自分もうまくなってそういうのを作りたい、とか、それを褒められたい、とか、そういう忘我を提供したい、とか、短歌のかたちで自分を表現したいとか、自分を残したい、とか、あらゆる事象を定型にする挑戦に取り組みたいとか、真実や救いのようなものと向き合いたいとか、定型表現そのものの幅を広げていきたいとか、誰もしたことのない表現を作りたいとか、この表現が生み出す場で、人とつながりたい、とか、他にやることがない、とか。
ツイッターで書くわけだから、見せたくないってことではない。表現はすべて承認欲求という考えかたもあるけれども、承認されるかどうか、反応をみたい、というのもあるようだ。現在地を知りたい、という欲求。これは、ちょっと承認欲求と違う。
先日、歌会の得票はポピュリズムだと書いたが、もっと以前には公約数だと書いてもいて、いまそれは中央値(メジアン)を知る行為なのかな、とも思う。
山登りで言うと、ガチで数千メートル級の山をクライミングしたい人と、何合目かまで車で上がって、その辺を散歩したい人もいて、そういう感じに短歌のゴールもある。
自分がどこにいて、どのゴールを行くつもりなのか。他の人はどこにいて、どのゴールを目指しているんだろう。
自選など。
人間のごみを集めてあたたかきミノムシの蓑をずっと見ている
歩くとき詩は涌きやすく足裏(あなうら)にそういうつぼがあるのだヒトは
笹紅をあげたき人であったよと言ってからそんな気をもっていた
人界の苦労を忘れ工場の裏の畑で花を笑む母
時間では心は年をとらざれば心ならざるものばかり老(ふ)く
新しいもの建つために壊れゆき壊されていく側から見おり
人間の入れぬデッドスペースで足突き出して猫がくつろぐ
人間一匹食っていけないことなんてないのだ闇は一寸の先
あまりにも悲しい夢は思い出せずやさしき脳が隠しておりぬ
あのように目を当ていれば男とは一年くらい狂うていたる
どのように生きてもいいと言われたらつらいな、水から遠いスイセン
酔いたればトイレが近くこの国にひろく立小便せしか忠敬
ぎこちないフォームでえいっ遠投す、目的観の低さが不幸
背を反って首かたむけて見つめたる君の景色を時々おもう
子のあらば外から帰りくるたびにかお包みたし耳珠(じじゅ)に触れつつ
悔しいがげんこつを目に当てて泣くそんなしぐさをするわけにいかず
じゃがいもが湯でほどけゆくそれまでにいやその後で大事な話
生きるとはかたちが変わることなので裸体の傷の君たしかなる
この場所をリーフィーアイランドと呼ぼう観葉の鉢数個だけれど
公園の低いベンチは流れゆく時間から少し離れて在らん
きはちすが君の背丈を残しつつ君を失う夢をみていた
とこしなえに名の残ることなきわれに今年の梅が咲きそめている
2017年3月4日土曜日
2015年02月の56首
人間のごみを集めてあたたかきミノムシの蓑をずっと見ている
青空の奥にたしかにある闇の遠のくべきか近寄るべきか
オリオンと2時間歩く彼の狙う弓の向こうに敵はおらねど
歩くとき詩は涌きやすく足裏(あなうら)にそういうつぼがあるのだヒトは
冷蔵庫にシールの台紙留められてこの家に春の祭りはきたる
高価なるもの身につけてレイヤーを変えてもきみの手にとまる鳥
忘れられていくほど眠り深からんその群青で死を拭いつつ
笹紅をあげたき人であったよと言ってからそんな気をもっていた
海を行くわが身にあらねプレヤデス星団の数を、目を確認す
「紛争はトップ同士がゼスチャーで争うとする」有志連合
法悦とうことばを知らず語りいて知らぬゆえ時にひどくかがやく
知名度は危険の保証、無名なる詩に目留(と)めるは地の見えぬ叢(むら)
死にさうな野良猫が昨日丁字路にうづくまりをり、旧(ふる)き仮名にて
僕のなかの誰がが僕を救う日を祈っていたが救われている
人界の苦労を忘れ工場の裏の畑で花を笑む母
ぐでんぐでんぐでんぐでんと歌いつつ五七のいずれに置こうと思う
時間では心は年をとらざれば心ならざるものばかり老(ふ)く
新しいもの建つために壊れゆき壊されていく側から見おり
ストーブのヤカンは色を変えぬまま内部で水を拒みはじめる
小さき子を立ち食いそばにつれてゆき立ち食うことへの憧れを植える
人間の入れぬデッドスペースで足突き出して猫がくつろぐ
ネットでの床屋談義は矩(のり)を踰(こ)え罪深くないがこころ毛深き
人間一匹食っていけないことなんてないのだ闇は一寸の先
あまりにも悲しい夢は思い出せずやさしき脳が隠しておりぬ
あのように目を当ていれば男とは一年くらい狂うていたる
アルコールの舌の上なる幸福の揮発性なることひるがえる
どのように生きてもいいと言われたらつらいな、水から遠いスイセン
酔いたればトイレが近くこの国にひろく立小便せしか忠敬
突堤に一つの兆しのごとくして落下する鳥のたちまち上がる
ウィスキーの香りはなぜか楽しさが含まれていてにやにや舐める
ぎこちないフォームでえいっ遠投す、目的観の低さが不幸
風強き道の遠くは霞みおり不透明とはひとつの終わり
通勤の狭き電車のイヤホンにボブマーレー流れ読み進む『国家』
背を反って首かたむけて見つめたる君の景色を時々おもう
おそろしく顔の小さな若者と大きな初老が同じバス待つ
せっかくの壺焼きなのにしょっぱさをコーラがぶ飲みして舌洗う
忘れればゆえにいくつか手にとられやがて再発見へのローテ
かたちなどでこぼこでよいたたなづく山のようなる苺をがぶる
エスカレータの一人だけ右に立つ男ついに左にしずかに並ぶ
啄木の再発見もそのうちにあるらむ、百年遠き泣きぬれ
全生命とか言いながら生命のたとえば60兆の宇宙で
マイケルというかなしみは人類の昔話になるまで消えぬ
子のあらば外から帰りくるたびにかお包みたし耳珠(じじゅ)に触れつつ
悔しいがげんこつを目に当てて泣くそんなしぐさをするわけにいかず
若さというチキンレースをすぐ降りて余力は若鶏の悪魔焼き噛む
じゃがいもが湯でほどけゆくそれまでにいやその後で大事な話
生きるとはかたちが変わることなので裸体の傷の君たしかなる
コーヒーにコーヒーゼリー食べながら先に笑って負けたる三時
この場所をリーフィーアイランドと呼ぼう観葉の鉢数個だけれど
早朝の宇宙と交信するように公園のわがラジオ体操
公園の低いベンチは流れゆく時間から少し離れて在らん
きはちすが君の背丈を残しつつ君を失う夢をみていた
とこしなえに名の残ることなきわれに今年の梅が咲きそめている
変わりゆく普通と知りてわたくしは君とかわらずふつうでいたい
つぶやきのサービス止んでライフログのライフの部分こっそり消える
ありがとうそしてさよならなんていう台詞をまさかじじつ吐くとは
青空の奥にたしかにある闇の遠のくべきか近寄るべきか
オリオンと2時間歩く彼の狙う弓の向こうに敵はおらねど
歩くとき詩は涌きやすく足裏(あなうら)にそういうつぼがあるのだヒトは
冷蔵庫にシールの台紙留められてこの家に春の祭りはきたる
高価なるもの身につけてレイヤーを変えてもきみの手にとまる鳥
忘れられていくほど眠り深からんその群青で死を拭いつつ
笹紅をあげたき人であったよと言ってからそんな気をもっていた
海を行くわが身にあらねプレヤデス星団の数を、目を確認す
「紛争はトップ同士がゼスチャーで争うとする」有志連合
法悦とうことばを知らず語りいて知らぬゆえ時にひどくかがやく
知名度は危険の保証、無名なる詩に目留(と)めるは地の見えぬ叢(むら)
死にさうな野良猫が昨日丁字路にうづくまりをり、旧(ふる)き仮名にて
僕のなかの誰がが僕を救う日を祈っていたが救われている
人界の苦労を忘れ工場の裏の畑で花を笑む母
ぐでんぐでんぐでんぐでんと歌いつつ五七のいずれに置こうと思う
時間では心は年をとらざれば心ならざるものばかり老(ふ)く
新しいもの建つために壊れゆき壊されていく側から見おり
ストーブのヤカンは色を変えぬまま内部で水を拒みはじめる
小さき子を立ち食いそばにつれてゆき立ち食うことへの憧れを植える
人間の入れぬデッドスペースで足突き出して猫がくつろぐ
ネットでの床屋談義は矩(のり)を踰(こ)え罪深くないがこころ毛深き
人間一匹食っていけないことなんてないのだ闇は一寸の先
あまりにも悲しい夢は思い出せずやさしき脳が隠しておりぬ
あのように目を当ていれば男とは一年くらい狂うていたる
アルコールの舌の上なる幸福の揮発性なることひるがえる
どのように生きてもいいと言われたらつらいな、水から遠いスイセン
酔いたればトイレが近くこの国にひろく立小便せしか忠敬
突堤に一つの兆しのごとくして落下する鳥のたちまち上がる
ウィスキーの香りはなぜか楽しさが含まれていてにやにや舐める
ぎこちないフォームでえいっ遠投す、目的観の低さが不幸
風強き道の遠くは霞みおり不透明とはひとつの終わり
通勤の狭き電車のイヤホンにボブマーレー流れ読み進む『国家』
背を反って首かたむけて見つめたる君の景色を時々おもう
おそろしく顔の小さな若者と大きな初老が同じバス待つ
せっかくの壺焼きなのにしょっぱさをコーラがぶ飲みして舌洗う
忘れればゆえにいくつか手にとられやがて再発見へのローテ
かたちなどでこぼこでよいたたなづく山のようなる苺をがぶる
エスカレータの一人だけ右に立つ男ついに左にしずかに並ぶ
啄木の再発見もそのうちにあるらむ、百年遠き泣きぬれ
全生命とか言いながら生命のたとえば60兆の宇宙で
マイケルというかなしみは人類の昔話になるまで消えぬ
子のあらば外から帰りくるたびにかお包みたし耳珠(じじゅ)に触れつつ
悔しいがげんこつを目に当てて泣くそんなしぐさをするわけにいかず
若さというチキンレースをすぐ降りて余力は若鶏の悪魔焼き噛む
じゃがいもが湯でほどけゆくそれまでにいやその後で大事な話
生きるとはかたちが変わることなので裸体の傷の君たしかなる
コーヒーにコーヒーゼリー食べながら先に笑って負けたる三時
この場所をリーフィーアイランドと呼ぼう観葉の鉢数個だけれど
早朝の宇宙と交信するように公園のわがラジオ体操
公園の低いベンチは流れゆく時間から少し離れて在らん
きはちすが君の背丈を残しつつ君を失う夢をみていた
とこしなえに名の残ることなきわれに今年の梅が咲きそめている
変わりゆく普通と知りてわたくしは君とかわらずふつうでいたい
つぶやきのサービス止んでライフログのライフの部分こっそり消える
ありがとうそしてさよならなんていう台詞をまさかじじつ吐くとは
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