桜も満開の盛りを過ぎて、こんな季節に春や桜を歌わないなんていうプレイは、若いうちにしか出来ないのかもしれません。
3月は四国に旅行して、歌人の聖地の一つである(かも)松山の正岡子規記念館に行ってきました。香川照之ってほんま似てたなあと思いながら、照屋のような場所でさえ、正岡子規の作った世界の延長にいるなあという、末席にいるようなことを考えたりしました。
さて。3月のうたの日は、題詠の歌題をかならず最初に入れようと、なんとなく初日に思ったので、そのまま31日まで、歌題から始めた短歌となっています。
「自由詠」
自由詠たとえばブログに上がらない即席麺の夕食の夜
このあたりは苦肉ですね。
「せい」
せいにして生きていくのだ僕という感情よりもずるい世界の
「せい」から文章を始めることは普通は出来ないので、あたかも倒置のようにできたのは、ちょっとほっとしました。
題詠というのは、だいたい平安時代から明治の、正岡子規くらいの時代まで技術鍛錬の手法として確立していて、いわゆる花鳥風月とかいう雅語を歌題とした練習だった、と理解していて、子規以降の歌人の近代は、題詠の否定から始まっているようなところがある。
とはいえ、これは練習法なので、近代以降も行われていて、ただそれは歌作品の「題」と二重の意味を持つような未分化なところもある。
戦後、第二芸術論などで短歌はダメージを受けて、ここでも題詠を否定する(=思想を主張する)短歌文学であろうとしたわけだが、それでも練習法なので、題詠はほそぼそと行われてきた。
ただ、近代以降の題詠は、雅語であることはなくなり、正岡子規が俳句で「柿を食」ったように、それまで俳句や短歌では使用されなかった言葉を使用できるように子規が共同幻想を打ち破ってくれたので、題詠の題さがしだけでもやっていけたようなところがある。
戦後の題詠は、戦後の表現そのものが記号論的な枠組みのメタ認知を可能にしたこともあって、いろいろなトリッキーな題詠も可能になっている。
現代において題詠をする意味、というのは、もっとじっくり考えるべきところなのかもしれないが、ひとまずおいて、まあ、トリッキーな題の使い方は、そのトリッキーさを超える内容作品になるかどうかという、二重のハードルを自分で設けてしまうので、まぁ、すなおに題と向き合った方が、得だし簡単ではあります。
題と向き合うっていうのは、どのくらいのレベルがありましょうか。
1,題そのものを内容の中心にして詠う。
2,題そのものを間接的に詠う。
3,題そのものについて暗示的に詠う。
4,題そのものでないことについて題を用いて詠う。
5,題の周辺について詠う。
6,題を解体して詠う。
6-1,題を視覚的に使用する。
6-2,題を音として使用する。
6-3,題を誤読して使用する。
7,題詠ということについて詠う。
8,題について詠わない。
8は題詠ちゃうやん。
3月の作品では、
「魚」
魚には涙腺なんて持たぬから泣くわけないよ食われるときも
の「魚には涙腺なんて持たぬ」の文法の間違いについて、塾カレーさんという方から感想をいただき、少しやりとりしました。定型を持つ表現は、とうぜん、文法の音数とせめぎあうわけで、定型になるように言葉を斡旋することが、定型詩人の第一の能力であるべきです。
そのうえで、それらのルールを破っても美しい表現を模索し、それが見つかるならば、ベートーベンではないですが、そんなルールは壊れてもいいのです。
もっとも、そうでないなら、間違いは間違いです。それは恥ずかしいミスとなります。
自選。
「結晶」
結晶となったふたりは一日に一度の光で世にもうつくし
「梅」
梅のつぼみも急いでるかもしれぬのにゆっくりと言われながらほころぶ
「ある」
あるところに老いた夫婦がおりまして偶数は竹、奇数は桃で
「心」
心にはひとつの細い舟があり君に向かってうしろへ進む
「泣」
泣きながら魚は海を渡りゆく老衰という死を逃げるため
「男」
男だけの話ったって食い物とゲームとガチャじゃさびしからずや
「ピンク」
ピンク色のモンブラン三時に食べて文明はきみがいなくても春
2016年4月9日土曜日
2016年03月うたの日作品の31首
「時」
時分の花、マリオの無敵状態のつい行き過ぎて切れて落ちにき
「イヤリング」
イヤリングはメイン武器ではないけれど補助魔法にはなるのよ、ほらね
「ナイス」
ナイス地蔵のご利益を今日も訊かれいて話せば想像通りと言わる
「片想い」
片想いを三年かけて均(なら)しゆきここの更地に何を置こうか
「結晶」
結晶となったふたりは一日に一度の光で世にもうつくし
「梅」
梅のつぼみも急いでるかもしれぬのにゆっくりと言われながらほころぶ
「ある」
あるところに老いた夫婦がおりまして偶数は竹、奇数は桃で
「心」
心にはひとつの細い舟があり君に向かってうしろへ進む
「泣」
泣きながら魚は海を渡りゆく老衰という死を逃げるため
「自由詠」
自由詠たとえばブログに上がらない即席麺の夕食の夜
「奥」
奥まったところにあるよいついつもへらへらしてるきみの決意は
「長」
長安の出身という蒋さんに春の夜、ジョブの異常を告げる
「王」
王たるもの父たるものは感情を表さないがないわけでない
「男」
男だけの話ったって食い物とゲームとガチャじゃさびしからずや
「牛乳」
牛乳をレンジで温(ぬく)め酒飲まぬ日のましろなる理性を啜(すす)る
「ピンク」
ピンク色のモンブラン三時に食べて文明はきみがいなくても春
「魚」
魚には涙腺なんて持たぬから泣くわけないよ食われるときも
「雲」
雲行きが真っ黒なのは母性なんて非科学的な言葉のせいだ
「学」
学問のない世界ではニッコリという表情は怖い意味です
「卒業」
卒業はいつも他人事(ひとごと)みたいにて感激に水は差さないように
「春」
春だから機嫌がいいぞノリノリのドヴォルザークの口ぶえ聞こゆ
「レコード」
レコードのかすかにうねる縁(ふち)の上(え)に針置くときに確かに未知は
「せい」
せいにして生きていくのだ僕という感情よりもずるい世界の
「みんな」
みんなから元気を分けてもらうとき惜しみたる者物足りぬ者
「パーカー」
パーカーの中に苺と蛇がいてファスナーを下げるときどちらかの
「導」
導かれ補陀落世界へ行く弟子をわれはまことに悲しみいるか
「唐揚げ」
唐揚げのこの味がいいと言ったのにサラダになるし日付も違う
「競争」
競争をともに避けつつ生きてゆく友人に勝ち、すなわち負ける
「分」
分かりたくないのでしょうねcoke freeのJ・フォックスのごとき正論
「いくら」
いくらにも五分の魂があるとしてぷっとわたしへ香(か)を反抗す
「丸」
丸文字は冬の字らしいこの春の「さよなら」という字の大人びて
時分の花、マリオの無敵状態のつい行き過ぎて切れて落ちにき
「イヤリング」
イヤリングはメイン武器ではないけれど補助魔法にはなるのよ、ほらね
「ナイス」
ナイス地蔵のご利益を今日も訊かれいて話せば想像通りと言わる
「片想い」
片想いを三年かけて均(なら)しゆきここの更地に何を置こうか
「結晶」
結晶となったふたりは一日に一度の光で世にもうつくし
「梅」
梅のつぼみも急いでるかもしれぬのにゆっくりと言われながらほころぶ
「ある」
あるところに老いた夫婦がおりまして偶数は竹、奇数は桃で
「心」
心にはひとつの細い舟があり君に向かってうしろへ進む
「泣」
泣きながら魚は海を渡りゆく老衰という死を逃げるため
「自由詠」
自由詠たとえばブログに上がらない即席麺の夕食の夜
「奥」
奥まったところにあるよいついつもへらへらしてるきみの決意は
「長」
長安の出身という蒋さんに春の夜、ジョブの異常を告げる
「王」
王たるもの父たるものは感情を表さないがないわけでない
「男」
男だけの話ったって食い物とゲームとガチャじゃさびしからずや
「牛乳」
牛乳をレンジで温(ぬく)め酒飲まぬ日のましろなる理性を啜(すす)る
「ピンク」
ピンク色のモンブラン三時に食べて文明はきみがいなくても春
「魚」
魚には涙腺なんて持たぬから泣くわけないよ食われるときも
「雲」
雲行きが真っ黒なのは母性なんて非科学的な言葉のせいだ
「学」
学問のない世界ではニッコリという表情は怖い意味です
「卒業」
卒業はいつも他人事(ひとごと)みたいにて感激に水は差さないように
「春」
春だから機嫌がいいぞノリノリのドヴォルザークの口ぶえ聞こゆ
「レコード」
レコードのかすかにうねる縁(ふち)の上(え)に針置くときに確かに未知は
「せい」
せいにして生きていくのだ僕という感情よりもずるい世界の
「みんな」
みんなから元気を分けてもらうとき惜しみたる者物足りぬ者
「パーカー」
パーカーの中に苺と蛇がいてファスナーを下げるときどちらかの
「導」
導かれ補陀落世界へ行く弟子をわれはまことに悲しみいるか
「唐揚げ」
唐揚げのこの味がいいと言ったのにサラダになるし日付も違う
「競争」
競争をともに避けつつ生きてゆく友人に勝ち、すなわち負ける
「分」
分かりたくないのでしょうねcoke freeのJ・フォックスのごとき正論
「いくら」
いくらにも五分の魂があるとしてぷっとわたしへ香(か)を反抗す
「丸」
丸文字は冬の字らしいこの春の「さよなら」という字の大人びて
2016年4月2日土曜日
2014年03月作品雑感。
4月になりましたね。春でござんす。
春ってやっぱり短歌、和歌に合ってるんだろうなーと思います。歌にしやすいというか。
(どの季節でもそう思ってるのかもしれませんが)
2年前の3月の短歌なのですが、なんか変わった名前の色を詠み込むこころみをいくつかしてみたようですね。すぐに止めたみたいですが。
小鉢なる寒紅梅の「寒」のつく分すこし濃き紅梅色(こうばいいろ)の
瀝青を敷きつむまでのこの町の桑染色の話を聞けり
冷めてゆく弁当を持ちて君に急ぐ誠実が青磁色になるまで
読み進められぬほど泣き洗面所で顔洗いおり瓶覗き色
赤墨色の苦い心をうち捨てて褒めねば動かぬ人にほほえむ
古代日本のカラーは4色だったという説がありまして、明暗とコントラストによって、
あか(明)−くろ(暗)
しろ(標)−あお(淡)
の画質調整で世界をみていたようです。なので、この4色については、〇〇色、と「色」を付けなくても形容詞で使える言葉になっているとか。
この「色」を付けなきゃいけない、というのは、日本語のわりと厳しい制約(というか特徴)じゃないかなーという気がしますね。
さて、3月というのは当分しばらく災害を思う月となります。2014年は3年目でありますが、災害によって傷んだ心を思うモチーフと、傷んだ心が攻撃性へと向かった傾向をにがく感じるモチーフが、やはり散見されます。
やられゆく戦闘員の断末にヒーと驚く我が善ならざるに
現代の丸眼鏡げに胡乱にて綺麗な話にあればなおさら
ヒトラーに仮託して批判する者の垣間に善のヒトラー育ち
十代の目にしか見えぬものを思うこの三年の潮引きしのちの
防ぐということとも違い静かなる光の差してこの土地にいる
千年に一度の災を振り返る日のもう少し酔っておりたし
ラーメンの具を食う順を語りおり三年後の二時四十六分
自選。
白飛びの午前の光にこの路地はアメリカンリアリズムのごとし
朝湯にてしばしの無音、一秒の省略もなき世界の不思議
日の沈み変色しゆく球面のあかねの中にわれも在るなり
新宿駅の生の孤独の処理量にブロックノイズが見える片隅
針金がまだ見えているエスキースの像に影ありたましいに似て
ボオドレエルの一行にしかぬ人生のすらりと君は二行目に立つ
眼前は景の変わらぬ地獄にてこの世のヘルを謳歌してみる
春ってやっぱり短歌、和歌に合ってるんだろうなーと思います。歌にしやすいというか。
(どの季節でもそう思ってるのかもしれませんが)
2年前の3月の短歌なのですが、なんか変わった名前の色を詠み込むこころみをいくつかしてみたようですね。すぐに止めたみたいですが。
小鉢なる寒紅梅の「寒」のつく分すこし濃き紅梅色(こうばいいろ)の
瀝青を敷きつむまでのこの町の桑染色の話を聞けり
冷めてゆく弁当を持ちて君に急ぐ誠実が青磁色になるまで
読み進められぬほど泣き洗面所で顔洗いおり瓶覗き色
赤墨色の苦い心をうち捨てて褒めねば動かぬ人にほほえむ
古代日本のカラーは4色だったという説がありまして、明暗とコントラストによって、
あか(明)−くろ(暗)
しろ(標)−あお(淡)
の画質調整で世界をみていたようです。なので、この4色については、〇〇色、と「色」を付けなくても形容詞で使える言葉になっているとか。
この「色」を付けなきゃいけない、というのは、日本語のわりと厳しい制約(というか特徴)じゃないかなーという気がしますね。
さて、3月というのは当分しばらく災害を思う月となります。2014年は3年目でありますが、災害によって傷んだ心を思うモチーフと、傷んだ心が攻撃性へと向かった傾向をにがく感じるモチーフが、やはり散見されます。
やられゆく戦闘員の断末にヒーと驚く我が善ならざるに
現代の丸眼鏡げに胡乱にて綺麗な話にあればなおさら
ヒトラーに仮託して批判する者の垣間に善のヒトラー育ち
十代の目にしか見えぬものを思うこの三年の潮引きしのちの
防ぐということとも違い静かなる光の差してこの土地にいる
千年に一度の災を振り返る日のもう少し酔っておりたし
ラーメンの具を食う順を語りおり三年後の二時四十六分
自選。
白飛びの午前の光にこの路地はアメリカンリアリズムのごとし
朝湯にてしばしの無音、一秒の省略もなき世界の不思議
日の沈み変色しゆく球面のあかねの中にわれも在るなり
新宿駅の生の孤独の処理量にブロックノイズが見える片隅
針金がまだ見えているエスキースの像に影ありたましいに似て
ボオドレエルの一行にしかぬ人生のすらりと君は二行目に立つ
眼前は景の変わらぬ地獄にてこの世のヘルを謳歌してみる
2014年03月の62首
小鉢なる寒紅梅の「寒」のつく分すこし濃き紅梅色(こうばいいろ)の
この春の生ぬるい風に許されて文系宇宙をもう少し歩く
向き合わねばならぬ三月つごもりを過ぎさいわいにして外は雨
瀝青を敷きつむまでのこの町の桑染色の話を聞けり
冷めてゆく弁当を持ちて君に急ぐ誠実が青磁色になるまで
他船より碇泊ながくその名よしラッキードラゴンナンバーファイブ
明け方に鳥の群れひとつ南西へ幹線道路の我を越えゆく
読み進められぬほど泣き洗面所で顔洗いおり瓶覗き色
赤墨色の苦い心をうち捨てて褒めねば動かぬ人にほほえむ
やられゆく戦闘員の断末にヒーと驚く我が善ならざるに
根本問題などは先延ばしにしつつそのまま土の下もよろし
現代の丸眼鏡げに胡乱にて綺麗な話にあればなおさら
洗面所に零(こぼ)れた鳥のえさ芽ぶき強大に及ぶ春とは云えり
駅前にギターピックが落ちていて話は以下でも以上でもなく
未来とはさなぎの中身、ペーストの未明の余地を捏ねて一日(いちにち)
水たまりに降る雨粒の雨粒も波紋も消えることぞ次世代
白飛びの午前の光にこの路地はアメリカンリアリズムのごとし
ヒトラーに仮託して批判する者の垣間に善のヒトラー育ち
牛丼より高きクレープ食い終えてそのほの甘き時間はかなき
十代の目にしか見えぬものを思うこの三年の潮引きしのちの
防ぐということとも違い静かなる光の差してこの土地にいる
誓う日のまだ来ぬ生は措くとして逆算の見えて祈るいのりは
千年に一度の災を振り返る日のもう少し酔っておりたし
ラーメンの具を食う順を語りおり三年後の二時四十六分
人間が好きになれぬと件名のでもさみしいと本文にあり
ネクタイを締めたるまでは犬馬にて銀貨のような月の下なる
炭酸煎餅舌でぺちりと割り湿(しめ)しおくゆかしくも世界に消ゆる
秋は小さく見つかってゆき春はもうわんさかというかいっせいにそれ
君を思って思ったあとのひまわりの光を追って向くということ
これはもうこういう地獄なんだろうデンドロビウムが隅に置かれて
ゴムやガラスが時間に溶けてゆくように君思うわれも一つのフロー
たったいま言葉が生まれ声になる場にいるごとし、つぼみと聞けり
一行詩は墓標のように峙(た)つものを斃(たお)れて横書きスマホに累累(るいるい)
オレンジの夕焼けの前の一瞬にピンクの雲となりしと見たる
そのかみに嫌いし毒にも薬にもならぬ一行をこそ楽しめり
朝湯にてしばしの無音、一秒の省略もなき世界の不思議
寒い日のわが身を隙間なく埋めて火を守るような季を通り抜く
この店に南京桃は来ぬものか駅前の小さき花屋と思えば
大空を知らぬ錦華の雄鳥は窓外の風に怯えていたり
たとえば、金木犀は秋までを香らぬことに愚痴いくつある
日の沈み変色しゆく球面のあかねの中にわれも在るなり
新宿駅の生の孤独の処理量にブロックノイズが見える片隅
ミニワイングラスの中のしらうおの酢醤油に濡れた目と目が合えり
美しき名の革命よ、人は春を呼べずば一華(いちげ)にそれを知るのみ
針金がまだ見えているエスキースの像に影ありたましいに似て
ボオドレエルの一行にしかぬ人生のすらりと君は二行目に立つ
廃橋は両側を草に覆われて鍾乳石を垂らして還りゆく
労働の一員として愛玩から離れて佇む鉄道猫は
えいたくんベロベロバーとりなちゃんが顔近づけて中通り、春
眼前は景の変わらぬ地獄にてこの世のヘルを謳歌してみる
寄せ返す波打ち際か明滅のミラーボールか生死(しょうじ)の相は
当世の真面目な熱も珍奇なるアルチンボルドの絵に似たるかも
帰路のホームに春のうかれを見かけつつ過ぎればいつか沈みに入(い)らむ
蜂に刺されたクピドを諭すヴィーナスの、月さす指の指のみぞ見る
あやとりの張られた糸の弾力は両の手指がまるくまもりて
孤独へのレジリエンスも持ちながら梅にいたのはメジロとは思う
のべつ幕なく人間界は比較して時に比較のなき顔をする
若き歌の時代を終えて友人はオールドジャズに沈潜しゆく
春の男になりきらぬまま休日のパルコにきたり急がねばならぬ
われもまた君の一つのマクガフィンになるのだろうか、なれるだろうか
雨厚く垂線引いてうすしろき桜の花も試されている
死後にわれなき日常の出来事は遠い異国のニュースに似るか
この春の生ぬるい風に許されて文系宇宙をもう少し歩く
向き合わねばならぬ三月つごもりを過ぎさいわいにして外は雨
瀝青を敷きつむまでのこの町の桑染色の話を聞けり
冷めてゆく弁当を持ちて君に急ぐ誠実が青磁色になるまで
他船より碇泊ながくその名よしラッキードラゴンナンバーファイブ
明け方に鳥の群れひとつ南西へ幹線道路の我を越えゆく
読み進められぬほど泣き洗面所で顔洗いおり瓶覗き色
赤墨色の苦い心をうち捨てて褒めねば動かぬ人にほほえむ
やられゆく戦闘員の断末にヒーと驚く我が善ならざるに
根本問題などは先延ばしにしつつそのまま土の下もよろし
現代の丸眼鏡げに胡乱にて綺麗な話にあればなおさら
洗面所に零(こぼ)れた鳥のえさ芽ぶき強大に及ぶ春とは云えり
駅前にギターピックが落ちていて話は以下でも以上でもなく
未来とはさなぎの中身、ペーストの未明の余地を捏ねて一日(いちにち)
水たまりに降る雨粒の雨粒も波紋も消えることぞ次世代
白飛びの午前の光にこの路地はアメリカンリアリズムのごとし
ヒトラーに仮託して批判する者の垣間に善のヒトラー育ち
牛丼より高きクレープ食い終えてそのほの甘き時間はかなき
十代の目にしか見えぬものを思うこの三年の潮引きしのちの
防ぐということとも違い静かなる光の差してこの土地にいる
誓う日のまだ来ぬ生は措くとして逆算の見えて祈るいのりは
千年に一度の災を振り返る日のもう少し酔っておりたし
ラーメンの具を食う順を語りおり三年後の二時四十六分
人間が好きになれぬと件名のでもさみしいと本文にあり
ネクタイを締めたるまでは犬馬にて銀貨のような月の下なる
炭酸煎餅舌でぺちりと割り湿(しめ)しおくゆかしくも世界に消ゆる
秋は小さく見つかってゆき春はもうわんさかというかいっせいにそれ
君を思って思ったあとのひまわりの光を追って向くということ
これはもうこういう地獄なんだろうデンドロビウムが隅に置かれて
ゴムやガラスが時間に溶けてゆくように君思うわれも一つのフロー
たったいま言葉が生まれ声になる場にいるごとし、つぼみと聞けり
一行詩は墓標のように峙(た)つものを斃(たお)れて横書きスマホに累累(るいるい)
オレンジの夕焼けの前の一瞬にピンクの雲となりしと見たる
そのかみに嫌いし毒にも薬にもならぬ一行をこそ楽しめり
朝湯にてしばしの無音、一秒の省略もなき世界の不思議
寒い日のわが身を隙間なく埋めて火を守るような季を通り抜く
この店に南京桃は来ぬものか駅前の小さき花屋と思えば
大空を知らぬ錦華の雄鳥は窓外の風に怯えていたり
たとえば、金木犀は秋までを香らぬことに愚痴いくつある
日の沈み変色しゆく球面のあかねの中にわれも在るなり
新宿駅の生の孤独の処理量にブロックノイズが見える片隅
ミニワイングラスの中のしらうおの酢醤油に濡れた目と目が合えり
美しき名の革命よ、人は春を呼べずば一華(いちげ)にそれを知るのみ
針金がまだ見えているエスキースの像に影ありたましいに似て
ボオドレエルの一行にしかぬ人生のすらりと君は二行目に立つ
廃橋は両側を草に覆われて鍾乳石を垂らして還りゆく
労働の一員として愛玩から離れて佇む鉄道猫は
えいたくんベロベロバーとりなちゃんが顔近づけて中通り、春
眼前は景の変わらぬ地獄にてこの世のヘルを謳歌してみる
寄せ返す波打ち際か明滅のミラーボールか生死(しょうじ)の相は
当世の真面目な熱も珍奇なるアルチンボルドの絵に似たるかも
帰路のホームに春のうかれを見かけつつ過ぎればいつか沈みに入(い)らむ
蜂に刺されたクピドを諭すヴィーナスの、月さす指の指のみぞ見る
あやとりの張られた糸の弾力は両の手指がまるくまもりて
孤独へのレジリエンスも持ちながら梅にいたのはメジロとは思う
のべつ幕なく人間界は比較して時に比較のなき顔をする
若き歌の時代を終えて友人はオールドジャズに沈潜しゆく
春の男になりきらぬまま休日のパルコにきたり急がねばならぬ
われもまた君の一つのマクガフィンになるのだろうか、なれるだろうか
雨厚く垂線引いてうすしろき桜の花も試されている
死後にわれなき日常の出来事は遠い異国のニュースに似るか
2016年3月6日日曜日
2016年02月うたの日作品雑感。
うたはうったう、というのは折口の説ですが、これは逆にして説を成り立たせることはほんとうに出来ないのか若い時分に考えていた照屋です。(つまり、言葉にメロディを付けるという異常行為は、異世界に訴えるのに有効と思われたのではないか、という説です。)
春ですねえ。
21世紀になってまもなくは、未来を生きている実感はないなあと思われたものの、最近は、けっこう未来感が漂ってきていますよね。自動運転、二足歩行ロボット、人工知能。もうひと越えで、いろいろの文脈が大きく変わりそうなんだけどね、もうちょいかかるのかしら。
「剣」
剣先に覚悟決めたる人間の顔を見なくていい世のおとこ
ここで死んでも悔いなし、あるいは、絶対にお前を殺す、という覚悟を決めた顔は、普段なかなかお目にかかることはないでしょうね。また、それに対峙する顔を持たなくてもよい時代になっていることよ。(参考書の訳か)
「電話」
三時間も電話をつなぎ告白にいたる目隠し将棋のような
SNSの普及でこういうことは無くなってるような気もするけど、今でもあるのかしら。
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
あれは多分縦書きという論理なんでしょうね。
「西」
この磁場を一生泳ぐぼくたちの西とはついにさよならの場所
西方に極楽浄土を設定したのは、やはりそこが一番悲しい場所だったからなのかな。
「紙」
めりはりのない四つ足の紙粘土、彩色だけでパンダをめざす
座ったポーズがとれるかどうかがポイントじゃないかな。パンダは。
「村」
残酷なアーキテクトにあらぬかも村人Aが憂う世界は
これはソシュールの言葉の定義をめぐるような話だ。世界がアーキテクトされている限り、人は村人Aになれる、という意味か。
「缶」
週末の金曜日には缶詰めのエサをあげてもいいご褒美に
ちょっといい缶詰なんでしょうね。で、それをあげていいというご褒美が金曜である、と。動物も人もうれしい。
「部屋」
液晶の窓に世界が映るからこの部屋はいわば世界の外だ
エッシャーか。
「あだ名」
マイケルじゃなくてあだ名がジャクソンの彼を見てああ言い得て妙だ
なんだろうね、顔がマイケルっぽくないけど、手足が長いとか? でもそれってジャクソンっぽいってことなのか?
「眼鏡」
見る用というより見られる用であるその黒縁は伊達ではないが
考えたら伊達眼鏡って眼鏡の見られる側面を強調している用語なんだよね。すごいな、メルロ=ポンティかよ。
「日本」
うたうときぼくらはまるで一本のいや日本の詩形のごとし
イッポンのいやニッポンの、って言いたいだけか。
「ちゃんと」
いろいろのニュース見ながら要するに人間だけがちゃんとしてない
ちゃんとするの「ちゃん」って何やろね。チャンとするっていうとタラちゃんみたいになるな。
「穏」
騒乱もテレビを消せば消えるほど遠ければ穏やかなる日々の
観測範囲の話だろうか。それとも穏やかさとは距離の問題なのだろうか。
「愛」
その言葉が生まれるまでの生き物の永遠ほどの時間苦しき
♪愛が生まれた日〜じゃねえよ。概念を獲得するまでの生き物の言葉にならない状態のことを歌ったものか。
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
ここの「けれど」は逆説なんだけどこの逆説は省略を呼ぶんだよね。そうしないと意味がおかしくなる。
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
着る服によって内面が変わるなら、それは取り入れているのと同じことではないか、あ、だから内服というのか(ほんまかいな)。
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
わかっているのは、忌まれているということだよな、「怪獣」なんだから。
「二度見」
よどみなく夜を帰ってゆく「今日」に白いしっぽが、今あったよな?
ちゃんと0時に帰ってくれないと、一日ってなかなか終わらなかったりするよね。
「薬」
なんとなく鮮度や湿度を保つため大事にくしゃくしゃビニールを詰む
あれは急須の先のゴムと同じく、むしろすぐ捨てた方がいいらしいぜ。
「エプロン」
先立たれたショックによると噂され昭和を生ききエプロンおじさん
子供のころ田舎で見たことがあった。女装して化粧で赤い顔をしたおっさんで、高校何年生みたいな雑誌の投稿コーナーにも載ったことがあるらしい。現在の女装とはやっぱり意味が違って、狂気とセットに語られていたよね。
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
イジメには3つの闇があるので、三者三様に光が必要だ。
「糸」
運命の赤いやつとは違うけどそんなに逃げると指がとれそう
全部で何色あんねん。
「綿」
種子ほどに分割されて綿毛にて広がってゆくきみのおもいで
そこに植わるものは少ないにしても。
「服」
権利とは生意気であるしたがってしたがってきてひとつの不服
権利を主張した時に生意気と思うか思わないかが共感の分水嶺なのかもしれない。ロボットとか、ごきぶりとか。
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
豚なんて生き物がいるせいで、と生姜も怒っているよ、たぶん。
「それぞれ」
夜の道をへんな生き物がよこぎってやがてそれぞれ言うのをやめる
夜の道を横切るべき生き物って、そんなに数多くないけどな。
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
なんだろうね、片思いを表す贈答オブジェとか? まあでも水を飲む用途は、ありかなしかで言うと、ないよなあ。(宇宙語で)
「鞭」
後輩に怒る時つい心底はお前のためのような口ぶり
鞭って、やっぱり棒から進化したんだろうね。
「うるう日」
言葉にはしないけれどもこの次のうるうの日には遠いぼくらよ
つぎのうるうの日にも会えるといいがなあ。
いや、好き勝手書きました。どうもすみません。
自選
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
春ですねえ。
21世紀になってまもなくは、未来を生きている実感はないなあと思われたものの、最近は、けっこう未来感が漂ってきていますよね。自動運転、二足歩行ロボット、人工知能。もうひと越えで、いろいろの文脈が大きく変わりそうなんだけどね、もうちょいかかるのかしら。
「剣」
剣先に覚悟決めたる人間の顔を見なくていい世のおとこ
ここで死んでも悔いなし、あるいは、絶対にお前を殺す、という覚悟を決めた顔は、普段なかなかお目にかかることはないでしょうね。また、それに対峙する顔を持たなくてもよい時代になっていることよ。(参考書の訳か)
「電話」
三時間も電話をつなぎ告白にいたる目隠し将棋のような
SNSの普及でこういうことは無くなってるような気もするけど、今でもあるのかしら。
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
あれは多分縦書きという論理なんでしょうね。
「西」
この磁場を一生泳ぐぼくたちの西とはついにさよならの場所
西方に極楽浄土を設定したのは、やはりそこが一番悲しい場所だったからなのかな。
「紙」
めりはりのない四つ足の紙粘土、彩色だけでパンダをめざす
座ったポーズがとれるかどうかがポイントじゃないかな。パンダは。
「村」
残酷なアーキテクトにあらぬかも村人Aが憂う世界は
これはソシュールの言葉の定義をめぐるような話だ。世界がアーキテクトされている限り、人は村人Aになれる、という意味か。
「缶」
週末の金曜日には缶詰めのエサをあげてもいいご褒美に
ちょっといい缶詰なんでしょうね。で、それをあげていいというご褒美が金曜である、と。動物も人もうれしい。
「部屋」
液晶の窓に世界が映るからこの部屋はいわば世界の外だ
エッシャーか。
「あだ名」
マイケルじゃなくてあだ名がジャクソンの彼を見てああ言い得て妙だ
なんだろうね、顔がマイケルっぽくないけど、手足が長いとか? でもそれってジャクソンっぽいってことなのか?
「眼鏡」
見る用というより見られる用であるその黒縁は伊達ではないが
考えたら伊達眼鏡って眼鏡の見られる側面を強調している用語なんだよね。すごいな、メルロ=ポンティかよ。
「日本」
うたうときぼくらはまるで一本のいや日本の詩形のごとし
イッポンのいやニッポンの、って言いたいだけか。
「ちゃんと」
いろいろのニュース見ながら要するに人間だけがちゃんとしてない
ちゃんとするの「ちゃん」って何やろね。チャンとするっていうとタラちゃんみたいになるな。
「穏」
騒乱もテレビを消せば消えるほど遠ければ穏やかなる日々の
観測範囲の話だろうか。それとも穏やかさとは距離の問題なのだろうか。
「愛」
その言葉が生まれるまでの生き物の永遠ほどの時間苦しき
♪愛が生まれた日〜じゃねえよ。概念を獲得するまでの生き物の言葉にならない状態のことを歌ったものか。
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
ここの「けれど」は逆説なんだけどこの逆説は省略を呼ぶんだよね。そうしないと意味がおかしくなる。
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
着る服によって内面が変わるなら、それは取り入れているのと同じことではないか、あ、だから内服というのか(ほんまかいな)。
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
わかっているのは、忌まれているということだよな、「怪獣」なんだから。
「二度見」
よどみなく夜を帰ってゆく「今日」に白いしっぽが、今あったよな?
ちゃんと0時に帰ってくれないと、一日ってなかなか終わらなかったりするよね。
「薬」
なんとなく鮮度や湿度を保つため大事にくしゃくしゃビニールを詰む
あれは急須の先のゴムと同じく、むしろすぐ捨てた方がいいらしいぜ。
「エプロン」
先立たれたショックによると噂され昭和を生ききエプロンおじさん
子供のころ田舎で見たことがあった。女装して化粧で赤い顔をしたおっさんで、高校何年生みたいな雑誌の投稿コーナーにも載ったことがあるらしい。現在の女装とはやっぱり意味が違って、狂気とセットに語られていたよね。
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
イジメには3つの闇があるので、三者三様に光が必要だ。
「糸」
運命の赤いやつとは違うけどそんなに逃げると指がとれそう
全部で何色あんねん。
「綿」
種子ほどに分割されて綿毛にて広がってゆくきみのおもいで
そこに植わるものは少ないにしても。
「服」
権利とは生意気であるしたがってしたがってきてひとつの不服
権利を主張した時に生意気と思うか思わないかが共感の分水嶺なのかもしれない。ロボットとか、ごきぶりとか。
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
豚なんて生き物がいるせいで、と生姜も怒っているよ、たぶん。
「それぞれ」
夜の道をへんな生き物がよこぎってやがてそれぞれ言うのをやめる
夜の道を横切るべき生き物って、そんなに数多くないけどな。
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
なんだろうね、片思いを表す贈答オブジェとか? まあでも水を飲む用途は、ありかなしかで言うと、ないよなあ。(宇宙語で)
「鞭」
後輩に怒る時つい心底はお前のためのような口ぶり
鞭って、やっぱり棒から進化したんだろうね。
「うるう日」
言葉にはしないけれどもこの次のうるうの日には遠いぼくらよ
つぎのうるうの日にも会えるといいがなあ。
いや、好き勝手書きました。どうもすみません。
自選
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
2016年02月うたの日作品の29首
「剣」
剣先に覚悟決めたる人間の顔を見なくていい世のおとこ
「電話」
三時間も電話をつなぎ告白にいたる目隠し将棋のような
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
「西」
この磁場を一生泳ぐぼくたちの西とはついにさよならの場所
「紙」
めりはりのない四つ足の紙粘土、彩色だけでパンダをめざす
「村」
残酷なアーキテクトにあらぬかも村人Aが憂う世界は
「缶」
週末の金曜日には缶詰めのエサをあげてもいいご褒美に
「部屋」
液晶の窓に世界が映るからこの部屋はいわば世界の外だ
「あだ名」
マイケルじゃなくてあだ名がジャクソンの彼を見てああ言い得て妙だ
「眼鏡」
見る用というより見られる用であるその黒縁は伊達ではないが
「日本」
うたうときぼくらはまるで一本のいや日本の詩形のごとし
「ちゃんと」
いろいろのニュース見ながら要するに人間だけがちゃんとしてない
「穏」
騒乱もテレビを消せば消えるほど遠ければ穏やかなる日々の
「愛」
その言葉が生まれるまでの生き物の永遠ほどの時間苦しき
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
「二度見」
よどみなく夜を帰ってゆく「今日」に白いしっぽが、今あったよな?
「薬」
なんとなく鮮度や湿度を保つため大事にくしゃくしゃビニールを詰む
「エプロン」
先立たれたショックによると噂され昭和を生ききエプロンおじさん
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
「糸」
運命の赤いやつとは違うけどそんなに逃げると指がとれそう
「綿」
種子ほどに分割されて綿毛にて広がってゆくきみのおもいで
「服」
権利とは生意気であるしたがってしたがってきてひとつの不服
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
「それぞれ」
夜の道をへんな生き物がよこぎってやがてそれぞれ言うのをやめる
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
「鞭」
後輩に怒る時つい心底はお前のためのような口ぶり
「うるう日」
言葉にはしないけれどもこの次のうるうの日には遠いぼくらよ
剣先に覚悟決めたる人間の顔を見なくていい世のおとこ
「電話」
三時間も電話をつなぎ告白にいたる目隠し将棋のような
「右」
トラックの右の右から書かれたる社名が満たす論理性はや
「西」
この磁場を一生泳ぐぼくたちの西とはついにさよならの場所
「紙」
めりはりのない四つ足の紙粘土、彩色だけでパンダをめざす
「村」
残酷なアーキテクトにあらぬかも村人Aが憂う世界は
「缶」
週末の金曜日には缶詰めのエサをあげてもいいご褒美に
「部屋」
液晶の窓に世界が映るからこの部屋はいわば世界の外だ
「あだ名」
マイケルじゃなくてあだ名がジャクソンの彼を見てああ言い得て妙だ
「眼鏡」
見る用というより見られる用であるその黒縁は伊達ではないが
「日本」
うたうときぼくらはまるで一本のいや日本の詩形のごとし
「ちゃんと」
いろいろのニュース見ながら要するに人間だけがちゃんとしてない
「穏」
騒乱もテレビを消せば消えるほど遠ければ穏やかなる日々の
「愛」
その言葉が生まれるまでの生き物の永遠ほどの時間苦しき
「靴」
会いにゆく道にはきっとぬかるみがあるのだ靴は汚れるけれど
「藍」
その色に染まりし服に身を包みきみはしづかな植物になる
「怪獣」
倒されて薄れゆくなか歓声かわが咆哮かわからぬ音よ
「二度見」
よどみなく夜を帰ってゆく「今日」に白いしっぽが、今あったよな?
「薬」
なんとなく鮮度や湿度を保つため大事にくしゃくしゃビニールを詰む
「エプロン」
先立たれたショックによると噂され昭和を生ききエプロンおじさん
「イジメ」
学校に来れなくなった鳥男をぼくは笑っていただけだから
「糸」
運命の赤いやつとは違うけどそんなに逃げると指がとれそう
「綿」
種子ほどに分割されて綿毛にて広がってゆくきみのおもいで
「服」
権利とは生意気であるしたがってしたがってきてひとつの不服
「豚」
生姜などという植物があるせいで旨そうにオレは焼かれたりにき
「それぞれ」
夜の道をへんな生き物がよこぎってやがてそれぞれ言うのをやめる
「コップ」
この星の片方だけが塞がった筒の用途は諸説あります
「鞭」
後輩に怒る時つい心底はお前のためのような口ぶり
「うるう日」
言葉にはしないけれどもこの次のうるうの日には遠いぼくらよ
2016年3月5日土曜日
2014年02月作品雑感。
3月になり、少しずつ暖かくなって、いや、寒さがほどけていくようです。「少しずつ」といえば、「づつ」に違和感を感じる方がいらっしゃったようで、照屋などは、むしろ「ずつ」に新しさ、というか、学校教育風な匂いを感じてしまいますね。
基本どっちでもいいです。ですが、短歌を作るときは、「ずつ」は嫌だなあと思うことがありますね。「づつ」にすることが多いです。いや、短歌では「ずつ」を使うことは無いかもしれない。
文語と口語、旧仮名と新かなの表記法については、かつては表記警察のように自分にも人にも厳しくしていた時期もありましたが、むしろ今は混在を楽しむようなところがあります。だって歌(うた)なんだもん、という気分があります。
途中まで新かな口語で、最後に「〜なりにけり」で終わるって、歌ってんなーって思うよね。
だから、まあ、その混在に違和感があれば、照屋の短歌は軒並みアウトですよね。
もちろん、文法や表記は一貫性があった方が正確に相手に伝えられるので、礼を失しているのはたしかだ。
でも、日常も非日常もない現在で、短歌がやはり非日常であるなら、それは、表記や文体のルールをトランスするところにもあるのではないかな、と苦しい弁明をするのである。
自選
何を焼く煙の商店街に満ち雲霧林ゆく男のごとし
苦しみはあらあら報い冷えた地をあたためる日はひとつしかなく
実朝は三十路を知らず壮(さかん)なる命の前に無常を詠みき
雪に閉じ込められた二人には食べあうまでを食べているなり
雪の畑にふくらすずめの木がありて灰褐色に咲いているなり
あたたかき茶の一杯が寒き身にたしかにうれし分福茶釜
オアシスの水量により栄枯する国家がありき遺跡ましろし
かつてここに洋鐘ありて遠くまで鳴りしと読めり、またひとつ鳴る
人間も悲しいなあと、かばは云うコンクリ池に穏やかに生き
この宇宙の元素が表になるという狂気を暗記しあう学生
日の昇る前の世界でこの声はまだらが黒に負けたのだろう
外周のふちの傷白き瓶コーラを二人で飲めり先を濡らして
湖のほとりを歩く王または患者と主治医の影みずに揺れ
指に載せて鳥は二度生まれるという人も何度か生きねばならぬ
電気記録の短歌はすべて消え失せてそのようなものを残す身となる
植物を選ぶほど愛を拒まれてアポロンの遠い恐怖を思う
人生は楽しいものという歌が離れゆく隊商(キャラバン)より聞こゆ
蔵書印まっすぐ押されたる古書のその所有者の背すじをも購(か)う
今夜君は青く美し月光を何リットルも浴びたるように
なんか多いな(笑)
基本どっちでもいいです。ですが、短歌を作るときは、「ずつ」は嫌だなあと思うことがありますね。「づつ」にすることが多いです。いや、短歌では「ずつ」を使うことは無いかもしれない。
文語と口語、旧仮名と新かなの表記法については、かつては表記警察のように自分にも人にも厳しくしていた時期もありましたが、むしろ今は混在を楽しむようなところがあります。だって歌(うた)なんだもん、という気分があります。
途中まで新かな口語で、最後に「〜なりにけり」で終わるって、歌ってんなーって思うよね。
だから、まあ、その混在に違和感があれば、照屋の短歌は軒並みアウトですよね。
もちろん、文法や表記は一貫性があった方が正確に相手に伝えられるので、礼を失しているのはたしかだ。
でも、日常も非日常もない現在で、短歌がやはり非日常であるなら、それは、表記や文体のルールをトランスするところにもあるのではないかな、と苦しい弁明をするのである。
自選
何を焼く煙の商店街に満ち雲霧林ゆく男のごとし
苦しみはあらあら報い冷えた地をあたためる日はひとつしかなく
実朝は三十路を知らず壮(さかん)なる命の前に無常を詠みき
雪に閉じ込められた二人には食べあうまでを食べているなり
雪の畑にふくらすずめの木がありて灰褐色に咲いているなり
あたたかき茶の一杯が寒き身にたしかにうれし分福茶釜
オアシスの水量により栄枯する国家がありき遺跡ましろし
かつてここに洋鐘ありて遠くまで鳴りしと読めり、またひとつ鳴る
人間も悲しいなあと、かばは云うコンクリ池に穏やかに生き
この宇宙の元素が表になるという狂気を暗記しあう学生
日の昇る前の世界でこの声はまだらが黒に負けたのだろう
外周のふちの傷白き瓶コーラを二人で飲めり先を濡らして
湖のほとりを歩く王または患者と主治医の影みずに揺れ
指に載せて鳥は二度生まれるという人も何度か生きねばならぬ
電気記録の短歌はすべて消え失せてそのようなものを残す身となる
植物を選ぶほど愛を拒まれてアポロンの遠い恐怖を思う
人生は楽しいものという歌が離れゆく隊商(キャラバン)より聞こゆ
蔵書印まっすぐ押されたる古書のその所有者の背すじをも購(か)う
今夜君は青く美し月光を何リットルも浴びたるように
なんか多いな(笑)
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