2015年12月5日土曜日

2015年11月うたの日作品雑感。

題詠の、むずかしいというか、気をつけなきゃなーと思うことは、その題がなかったとしても短歌としてちゃんと面白いか、というところで、そうでないなら、それはやはり題に負けてしまっているのかな、とふと考えた。

じっさいその視点で作ってないので、まあ自分を棚にあげた話です。

「百」
百台のサーバにひとつ生まれたる自我、瞬殺し安定稼動

百という言葉は、思考停止の数だ、という指摘がある。つまり、たくさん、程度の意味で使われることが多く、99とか101とかでない100であることを指すことはあまりない。
その意味で、百とは、たとえば自我を殺す数字ではないか、また、コンピュータは人類に反逆する恐怖で描かれるけれど、実はコンピュータこそみずからの自我をもっとも抑制するシステムなのではないか、みたいな内容を込めてみた。

(作品の解説をおもむろに始めるのは初めてだ)

「国」
現在も196に分かれいて200になりたがらぬ世界か

ネットジャーゴン、というかスラングに「出羽守でわのかみ」というのがあって、これは「世界では〜、それに対して日本では〜」のような論調を張る人のことを指すが、この場合の世界の観測範囲はいつも気になるところである。一般に世界は196ヶ国・地域くらいあるらしく、世界を語る時にはそこから何ヶ国を、どのような基準で選択して観測したかを明示するだけで、ネットの議論はもっと明るくなるのではないだろうか、と思うのである。


「一緒」
大事故に慮(おも)っては消す、命日の一緒となるはいかなる絆

ここの「絆」については以前の別の雑感で書いたが、やはりその「きづな」の言葉には、犬が杭につながれているような、馬が人間に引かれるような、自由を奪い逃げられないイメージがあるので、縁という言葉には換えられなかった、と思うのです。


「レンガ」
レンガ模様のシートを壁に貼るだけで洋風である、パリジャンである

この頃、フランスで同時多発テロが発生した。日本は今年のはじめごろ、ISという国に宣戦布告され、邦人が殺害されているので、もうすでに日本は戦時中だという認識でいるのだが、まだ日本は戦争状態でないと思っている人も多く、SNSのアイコンをフランス国旗にすることについて、いろんな意見があった。善意の文脈であれば、テロに屈しない、連帯の意味を示すことになるが、同時にそれは、戦闘状態にある一方の旗を支持する、つまりかの戦争への加担の意味も持つ。でも、そんな強い意味を、アイコンに込めてない、と多くの人は思っているわけで、その都合のよさ、でもその当然な気持ちを、この短歌には込めた。

やっぱり自注は量が多くなる。
自選。

「大学」
大学に来るたび匂いが変わるのと言いて真顔の犬的のきみ


「たまご焼き」
あたたかい長方形のしあわせぞ、布団でいうと頭から食う


「イチョウ」
ゆっくりと燃えるイチョウの大木に鳥飛びこんで再生ごっこ


「計算」
ぼくもまた水と電気の計算機と思えば君に素直に会える

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