2015年12月6日日曜日

2013年06月作品雑感。

6月の短歌だ。こう現在の季節とちがうと、感想を書きにくい感じがありますね。

  かたつむりを知らねば恋えぬ紫陽花の発色のピーク過ぎし一角

かたつむりは、本当にみなくなったもので、かつては、アジサイのイラストには、必ずといってよいほど、葉の上にかたつむりが描かれていましたが(いやイラストではなく現実にも葉にいたものです)、現在は、アジサイは見るものの、かたつむりは見てないですね。

動物は、植物よりも種族として弱いのかもしれません。

  あと何度ぽっかりと胸に穴を開け前後左右にさみしさに圧(お)さる

慣用句とか、ベタな組合せとか(あじさいにかたつむりとか)に対するメタな視点は、日本では、ある時期からもうずっと飽和していて、それがけっこう知的レベルの高い行為である、という意識すらない状態になっているので、現代において表現行為は、どこか二次創作的な雰囲気をともなうことがある。

そして、やっかいなことだが、こういうメタ視点というのは、反転したり、一周することで、同じ言い方に戻ってくることがある。すなわち、ベタを避ける→あえてベタに行く、の反復作用が起こるので、評価が分かれてしまうのだ。

または、ベタな慣用表現が、ある心情を実にうまく言い表していたことを発見するプロセスというのもあって、上の「ぽっかりと胸に穴」なんて、ベタなんだけれども、ここはベタで、いやベタがいい、みたいなことになったりする。

恋すると、浜省がグッと沁みるみたいなね。なんの話やねん。

自選。
  メルカトル図法の北は限りなく引き伸ばされてそれゆえに冷ゆ

  ようやくに夜を惜しまずなる生となるか、車を聴きつつ眠る

  腐りたる叢(むら)より光る虫ひとつ天にのぼると見れどただよう

  夭逝するほど才をもたねば人生は長くて楽しくてわからない

  町よりも土ふたつ書く街に住み記憶の土はいつのぬかるみ

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