2015年12月5日土曜日

2015年11月うたの日作品の30首

「サッカー」
よちよちとサッカーボール突(つつ)きたるロボット、今は拙(つたな)さが花

「エレベーター」
エレベーターで二人は斜め上を見るポスターの若人(わこうど)ならざれど

「大学」
大学に来るたび匂いが変わるのと言いて真顔の犬的のきみ

「県」
県を分ける川を渡りて振り向けばああこのようにきみ来(こ)ぬ未来

「たまご焼き」
あたたかい長方形のしあわせぞ、布団でいうと頭から食う

「百」
百台のサーバにひとつ生まれたる自我、瞬殺し安定稼動

「並」
並ばない自転車の前を行くときも後ろのときも愛であるのだ

「雑」
どの道を選んでもきっと混雑をするが口笛ふいて行くべし

「国」
現在も196に分かれいて200になりたがらぬ世界か

「いい人」
いい人になってしまった帰り道ふたりでホッとしたのもたしか

「一緒」
大事故に慮(おも)っては消す、命日の一緒となるはいかなる絆

「マラソン」
ひとりだけコースをはずれ降りたのに右上あたりのタイムが消えず

「ナルシスト」
何億人の同じ星座の運勢を神妙に読む、このうぬぼれや

「本のタイトル」
亞書もまた史料となりし未来にて予言書として読む群れあらん

「雲」
にんげんの心から白が離れゆきもう届かねば雲とは呼べり

「ピンク」
ブルーフィルムをピンク映画と訳したる先人のリアリズム明るし

「放課後」
放課後の待ち伏せを逃げ遠くとおく君と歩いていたけもの道

「飛行機」
飛行機がいちまいの町を越えてゆく彼がジェイルと呼ぶ、爪ほどの

「虫」
人間がすぐに滅びてしまわぬよう虫のデザインせし世界かも

「レンガ」
レンガ模様のシートを壁に貼るだけで洋風である、パリジャンである

「全校生徒600名の前で一首」
いつか戻り君は言うのだ「変わったなー」「変わってねえなー」自分のことを

「ラブレター」
ハートマークを書かざるべきか書くべきか重くはいかん、軽くてもダメ

「イチョウ」
ゆっくりと燃えるイチョウの大木に鳥飛びこんで再生ごっこ

「貝」
そんなにも世界から身を守りつつ生きていくのだ、食べてもうまい

「病院」
黒光りする板廊下を大きめの茶色いスリッパでじゃあ、またね

「好きだった教科」
月曜の一限だから好きだったけれど落とした「イタリア事情」

「凛」
いままさに誰かやられているだろうその上空に凛々しくも夜

「消」
町の灯(ひ)がだんだん消えてほんとうに夜になれたら朝が選べる

「イケメン」
傘のない駅までの道はつめたくて水もしたたるイケメン、の横

「計算」
ぼくもまた水と電気の計算機と思えば君に素直に会える

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