2015年12月12日土曜日

2013年07月の32首

友人の記事を読みつつわれもまた何かの花を買わんとするか

百年目の自転車競技を思いつつ慣れにし道を落車するなり

ねずみ色の粘土の背びれするどきをかたまりに戻し遊びに行けり

現生のホモ・クリクタス(クリックするヒト)も減る未来クリック出来る場所に集まる

固き言葉にまだ成りきらぬ内面のとろりとしたるものだから吐露

駅前の工事終わればたちまちに上書き前の景失えり

今日までがセールといって渡されるカタログの夏タイヤ一覧

目が冴えて真夜に思えりこの国語の邪な智の逃げ込める闇を

煙草の輪のきれいに宙に浮くように「わっかりました」の「わっか」清しき

理屈では救えぬところにいるを知り火を受けとらぬ茴香ゆれる

きずなとは悲しき言葉海からの綱離さねど細きゆくよう

酒飲めば寂寥の水位上昇し電話したきがせぬ夜である

だいたいは三万日に収まれる喜怒哀楽に君といるなり

君が貼った取れない言葉の付箋紙が今朝もシャワーにぴろぴろ跳ねる

要求が独裁的に響きたる夕べ、多寡なら多に身を隠す

橋の下に豪雨を凌ぎ寄り来れば先客の目が集まって散る

起きててもしょうがないかと寝るように生き死ぬことの罪を探れり

かき氷の青い光を噛みながら同じ話をする側になる

縄文の人口減少期の空にかかるエフェクトすさまじからむ

とんぼ少年絶滅ののち人界をうかがうようにとんぼあらわる

選ぶようで選ばれている心地してフォトショ加工の顔を瞶(み)るなり

朝もやの農道で野菜もつ我がカラスと対峙せしはうつつか

キミのコト知りたいと書きベタなのかメタなのか分からないまま送る

教条の冷たき言葉を最後まで伝えずなりき、慈なきにも似て

振替輸送に地下の通路を並びいて人生の比喩にしたき誘惑

表現はひたすらさびし、血反吐など一度も吐かず吐ける言葉の

夏休みだったと思う畳間にチャッとくっつく脛(はぎ)を見ていた

さびしいと書けば紛れるさびしさもあるか、静かなタイムラインに

振り向けばすべて決まっていたような未来を前にしばし酔いおり

感傷はかくのものかはひとり海に近づけばつまり生臭かりき

何というカニか知らねど海沿いのアスファルトの上で思案している

公園の明かりがぽっと灯るまで本を読みいし姉妹が去りぬ

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