2015年12月20日日曜日

2013年10月の31首

エイブラハムは鬱々思う奴隷なき未来に我は憎まれたるや

彼岸花用水の土手に群咲いて今のところは眺めいるのみ

すぐばれる嘘をさりげに混ぜ込んで彼女は生きる粧(めか)し違(たが)いて

何度目かのラストチャンスか残り世をニコニコ生きるか否かの分岐の

秋の米含めばあまし、斬ったのが馬謖であれば涙も流る

雨上がりの蜘蛛の糸にもかがやかずデバイスは君の言葉とつなぐ

練り切りを口に含んでゆっくりと舌で圧(お)しつつある君の黙

鼻先に木犀を寄せて反応を見る君をみる、君に尾を振る

星と星を懐中電灯で結びながら最後まで星の話しかせず

機械から生命の坂をなんだ坂こんな坂とて登りし記憶は

このビルの裏路地のどこかわからぬが木犀がある、告ぐことならず

被援助志向早めに断ちてその後に「困ったらすぐ言いな」と笑めり

追いつかぬけれども走る、身内(みぬち)焼く願いが業に鋳込(いこ)まれるまで

業深き子役の笑顔、おっさんの我が部屋も更け浅漬けを食う

テレビ切ればしんしんと少し肌寒く懐(ふところ)ふかき秋の夜長ぞ

地球ゴマの指の横まで傾いて離れんとする、求めんとする

朝という場所の明るさ、ひかりとはやはり讃嘆する意を秘めて

この生を死ぬのは一度、夜半(よわ)覚めてあれこれ時にまざまざ選ぶ

冷蔵庫にいただきもののラングドシャ、ちびちび食いつオータムに入(い)る

雨と知れば出る予定なき休日に出かけたかった無念のみ湧く

やり過ごす為の密かな知恵としても規則正しく人はあるなり

文字はもう塩昆布(しおこぶ)となり非言語の海で笑顔のあなたが見える

静謐よりしずかなものの共有を終えて余韻を立てるダンサー

不協和音の定義は代わりこの音はかつて和音でありしトリビア

青空の広がる前はなにかしら一過するらむ、辛いことだが

スコップの泥こそぎつつ沈みゆく心のもろもろなどもまとめて

進みゆく予測の円は広がりて外れることなく、なかばにて消ゆ

悲しみと同じ数だけうまいものがあるかもしれぬ、泣きそうに食う

今度君に会うのはたぶん西暦で4000年なら優しくしよう

さびしさは知性のどこか、独語せぬ対話プログラムの待ち時間

包むればぐいと頭を圧(お)してくるハムスター温(ぬく)し頼もし嬉し

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