2015年12月13日日曜日

2013年08月の35首(と5句)

八月の息を大きく吸うわれに柑橘は色を増して身じろぐ

身じろぎもせぬ一瞬が承諾か拒絶か聞けぬ夏のはじまり

はじまりは我の意識の浮かぶ海の小暗(おぐら)き熱水噴出孔の

噴出孔の熱のけぶりに交ぜられて強く閉じれば目の生(あ)るるなり

生るる神は身罷る神を笑いつつ一新しおり敬意にも似て

相似なす自然の不思議マシュルームクラウドをかつてアメリカは植ゆ

  季語として句作いそいそ原爆忌

  爆弾を落とした罪はさておいて反省しおり苦い顔して

  そも比喩は不謹慎なりオクラ交(ま)ず

  竹山広全歌集読み重たかり想像力も荷を背負うごと

  積乱雲を遠景として蝉の死ぬ

  無生物の同心円の中心の血走った目をブルと呼ぶかも

  子孫からの糾弾愛(う)きや慰霊祭

  爆弾は精神へ至るプロトコルの物理層にて確固とならむ

  ひこうきもきのこも夢は美しき

植えるにはあらず広がるヨシ原の手を探り入れて楽し子供は

子供らも今駆け抜ける現在を老いて懐古の一景とせむ

一景に迷う、廃墟の東京の地震の秋か空襲の春か

春の芽のもうぐんぐんとどんどんと開くとは今を過去にすること

過去の過誤を繰り返すごと善意なお湧く生とうに苦笑いなる

苦笑いして聴いているシステムへの不満のようで要は不平に

不平怏怏(おうおう)水のシャワーで流しいてサーモグラフの青き生まで

生まれたる以上死なねばならぬのに生き方だけを述ぶる本閉ず

本閉じて人と狭さを分かち合う電車、混むのが止むまで戦後は

戦後には戦後の論理、真っ青な空に見入りし感慨なども

感慨はゲニウス・ロキの草むらのヘビの脱皮と風化してゆく

風化して形こぼれていく時に白亜の記憶刹那、脳裏に

脳裏には何度目の夏、上向きの蛇口の水の弧に口を寄す

口を寄すれば嘴が突くコザクラの戦略の枝ふるく懐(なつ)けり

懐かない子らを見守る公園の遊具のゾウは明るきブルー

ブルーなす夜にかがやく満月は理由になるので君に会わずき

会わず思えば星飛雄馬のほっぺたの猫ひげを持つ女と言えり

言いながら詮(せん)ないことと承知して矛先を天に向ける、白雨の

白雨過ぎ雲まだまだらなる空に大会決行の花火とどろく

とどろいて土砂降る雷雨、人間が追い出されるまでゲリラは続き

続きはまた今度と明るく手を振ってそういう風に終わるかたちだ

かたち確かにベントス(底生生物)らしく奇妙にて身を割けば白き肉美味ならん

美味も喉三寸にしてそののちは君の不在も在も苦しき

苦しい日の餌を求めるアリのごと甘味を嗅げり、少し怯えて

怯えては振り返りつつ前に行く背中を見ればいとし、八月

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