2017年6月16日金曜日

2015年05月の77首と、パロディ短歌6首。

アーチドアに閉じ込めたるか君のいう崇拝してはならぬ神様

しら鳥のすっくり立つと眺めれば朝日を受けて白いビニール

始まりを終わりとともに迎えおりさよならだけだ、もう人生は

こどもひとり手をあげている高架下の横断歩道、おとなはずるい

与えても受けても人は渇くなり朝からコーラ飲み干すお前

天空と水田に月、お互いに孤独にありて寂しくはなし

「そのこころ熱く燃えればああまるでひたくれなるの」「なるの」じゃねえよ

ライラックという名前のカラーパターンのデスクトップは配色昏(くら)し

人を拒むことで苦しむ罰よりも苦しめている罪なお痛し

孤独とのながい対話をするための小説、ゆたかでさびしい時間

人生は愛のぬかるみ君と行くウーラガ、ドゥーラガ、どこまで続く

明日の朝が来ぬかもしれぬ就寝の悲しいが死はかく眠くあれ

ファミレスの塔看板の消えている明け方、街が青色である

漠然とたぶんチャンスがありそうな人にはつらい月曜の来る

思念などアメーバ状にひろがってうすくちぎれて、みんなさよなら

愛情が貴重なことを知っていてキバ持つ犬はキバを使わず

果物に喩えるつもりなどはなくこの空を呼ぶオレンジ色の

休み明けの気持ちが明るかったのであけおめメールを出したかりしが

真っ青の下に雪嶺、近くても人の苦悩はわからずじまい

ひなたへの道がここにもあるけれど行かないんだろうなあこの今も

闇が産む君の神様、現在はたとえばエキア=ドイモ神かも

電動の自転車はやがてだんだんとペダルが重くなる恐怖譚

頭蓋から大きな猫が車の下で座って寝おり、車はやめる

昼前の数分尺のローカルのニュースでわれの焼死を報(しら)す

味覚からたしかに今を疑ってぶどうを酸っぱいものとして見る

少年よ空想に足をつまづかせひとりで帰る下校の羨(とも)し

過去未来の在(あ)らぬお前の鳴き声にうんうんうなづいては離れざる

ある未来おそらく虫に充ち満ちて自然を恨みヒトもまだ在り

罰でない死があるならば閾値をどこに合わせて思うあんにゃろー

有名の使命あらねばこの生はほぼ無害にて酔い眠りゆく

考えるあたまあとから引きずられタコはあしから未来へすすむ

生臭い霊長類がぐるぐると都心を離れて夜を転がる

希望の語を翻訳アプリで順に聞く今も誰かが秘めたる音か

在ったとは今はどこにも無いなので過去とはつまり百万の嘘

希望の意味込められているものたちの前向きにして到達できぬ

なんとなく会うのが億劫なることがいまなんとなくうすら寒かる

ペン入れで表情明るくするように君に補正を加えてわれは

本当のことが知りたい知りたくない綺麗といえぬべき茜空

愚かなるエヴァンジェリストは行く先で救うべき人を怒らせて去る

愛情と思っていしがこの豚の死後のため大事に育てらる

眠い子が父待つようにだが父は子の寝たあとを音たてぬように

甘えたいけど逃げていく飼鳥の生おおかたは思わない通り

護岸工事の名目でここも追い出され猫の墓など置いたまま去る

ひるさがりガソリンスタンド白亜にて高屋根の巣にツバメ一線

明け方に見る半月は下弦にて明るい方へ一矢報いる

感情の生活はアニメにて過ごしその他はまるでいちまいの板

ズボラなる塩ソムリエは世界中の塩を味わいしょっぱいと言う

中華街なんだからもう言っちゃいなまだ生きててもいいと思った

この世界を言葉で触れる君といて舌で知りたきわれひた隠す

連打してこそテロリズム、攻撃の対象に迷うあいだに正午

ぶらんこの周期はいつも少しずつ君が先ゆく日常でいい

どこまでも行けぬ夕方、帰ろうか迷う路地にてシチューの匂い

不意打ちのチョップを受けてその時に確かにひとつふっきれたもの

援助とは優しさと善に満ちている侵略の謂(いい)目を細め笑(え)む

何もないところで躓(つまづ)き過ぎてから、老いってなんだ、振り向くことさ

ポケットに行進の音たてているタブレットひかりなくとも白し

年寄りを年寄りの場所に送り込み若者は行け、年の寄るまで

沈黙に雷雨含めばわれも言わずメンタル豆腐に醤油落としつ

光の波に上下しながらほうけ虫意味なきような生には見える

目の前と同じ高さに咲くムクゲ、食うか食われるかにはあらねど

一刺しでこれ終わらせて改めて同じようにてやや違う生へ

娘ひとつ自転車で坂を下ってく、姿勢を変えず流れてゆけり

間違えてからもずいぶん進みたり戻れねばこの間違いを行く

その脚はきれいであるが本当は隠したいところが惹いている

大通りの両端に男子女子分かれ歩くのを見る、見る方が照れる

霧雨が宅配便の兄ちゃんを少しく楽しそうに走らす

慈(いつく)しめば限りなくかがやくほどの不思議をもちていのちとなせり

道もひろくきれいになった町を走るきれいの前の思い出は消え


 ある人と、カレー短歌
カレー食う過去も未来も朝夜も銀河も匙ですくっては食う

初夏なのでたぶんいつかは嫁になる君と食べてもいい茄子カレー

道のような男の作るカレー鍋吹き出る汗のひたい、どこまで

隠し味隠し切られている恐怖、色、香り、味すべてよけれど

しんじつはだいたいダジャレ中村がCMで弾くショパンのワルツ

駄洒落なる中村誰じゃ、ジャガイモの少しパサつくココイチカレー

調べてはならないカレースパイスで調合できる惚れ薬レシピ

木を隠すには森の中あーんとか言いながらわれを試したる匙

迷い込んだカレーの森にもがきつつふと思う、ハヤシライスは林


  パロディ短歌
日本脱出したし皇帝ペンギンもケープペンギンもヒゲペンギンも

10ルピー、5ルピー、2ルピー、1ルピー、目減りしていく我のルピー

二日酔いの無念極まる僕のためもっと電車よゆっくり走れ

ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場で溶けたアイスは

「嫁さんになれよ」だなんて缶チューハイ二本で自分に酔ってもいいの

馬を洗はば馬のたましひ冱ゆるまで人戀はば馬あやむるこころ

2017年6月11日日曜日

不自由律短歌の試み

2017年5月31日より6月10日まで、ツイッター上にて、不自由律短歌をこころみた。

不自由律短歌とは、短歌の57577という形式を問い直すかたちで、大正〜昭和10年代まで自由律短歌、という運動があったのを下敷きにした名称だ。半分冗談でもあったのだが。

乱数プログラムで決められた句数と字数を詩型とする、57577ではないが、自分で自由に韻律を決めてよいそれまでの「自由律」ではない短歌、というスタイル、とした。

 5/31 「8153」
別れが近づく日明るいな君は

 呼びかけてみると、30首以上歌を寄せていただいた。ここでは1字句の扱いがポイントとなるようだった。

 6/1 「55897」
新宿の西口のヨドバシカメラのパソコンコーナーでいちゃいちゃやめれ

 この日も40首以上寄せていただく。不自由律を考えるにあたって、自由律短歌と、短歌の関係を考える。 

 6/2 「27464」
夏じわじわ迫る予感の、扇風機のそわそわ

その、櫛に流るる黒髪、たしかあの子二十歳だ #パロディ短歌

さくっ君が横から(近いよ)スナック菓子つまんで

ちぇっ美人に席をゆずって優しさとはみえねえ

コンッ二階の窓に小石を君も寝ずに待ってる

 この日は40首以上。不自由律は、ここでは2字句の処理がポイントとなる。 

 6/3 「8385」
いつもの電車をやめていつもの人たちさようなら

宮廷画家にもなってサトゥルヌス勃起させてゴヤ!

洗濯機の中ふたり覗き込んでると二神論

 この日は数首。字数が少ないと、短歌というよりも俳句との接点が大きくなる。どの字数から人は俳句と短歌を分けるだろう。あと個人的に、指を折らないと音が数えられないことにショックを受けた。短歌を作る時に、指を折ったりは、しないからだ。

 6/4 「474466」
たしかにキジバトひとつ小さくくぐもる鳴き声して朝のはじめ

そらみろ! 空を見るなよ! まったくお前はいつもいつも茶化してくる!

たとえばブルキナファソの都市部でじわじわいらすとやが流行る世界

ゆびおり
今日のご飯は
ラビオリ
食べおり
不自由律
考えつつ

 この日は20数首。不自由律では、字余り、字足らず、句割れ、句またがりといった手法は、基本的に相容れない。ではなぜ短歌ではこれらの手法が成立するのか、について考えた。

 6/5 「85」
なきさうなかほで、わらつてる

「さようなら」の「う」が、気になった

忍者屋敷なら、喜んで❤️

分け入っても分け、これあるわ #パロディ短歌

疲れているのに、風立ちぬ

第八惑星、きみの尻

ダンゴムシ色の空ときみ

いんぐりもんぐり、人助け

ラブストーリーは屋根裏に #歌謡曲風

 この日は150首以上。字数が少ないのでキャッチコピーっぽくなる力学が働くので、どう逃れるかがポイントといえる。

 6/6 「58584」
昨日から降り続いている恋人はソファーでクロール、ひまだね

韻律のワークショップには韻律のインストラクター、きもいな

 不自由律をスタートして1週間。この日は50首以上。このあたりから、不自由律に疑問を呈する意見がタイムラインに見えてくる。不自由律の出発点が、「短歌はどうして57577なのか」であることを、そして不自由律の定義を再確認する。この日、小林通天閣さんが不自由律ったー(https://shindanmaker.com/728883)を作成し、一時的にバズったようである。

 6/7 「674647」
夏から秋、冬から春に風邪ひく、どうもぼくは日本に好かれてないな

犬の匂い犬でなくきみ、
わたしはわたしが溶け液体、
月が映って

泳いでいる泳いでいるよ遠くに果てしもない遠くに誰のおもかげ

 この日は40首以上。ランダムに生成されるフレーズが、短い、長い、という時に、それが相対的である表現であることに気づく。そのとき、モデルになっているのは、やはり5音、7音なのである。これを必然とするか偶然とするか。そこには科学的な視点と、史観が要求される。

6/8 「98675」
暗闇の中から
黒い心もて
月影にも
顔を見せずに
これも僕

カートリッジ式の
心をかばんに
揃えている
悲しみ分が
減りやすい

甲州街道の
街を外れると
ホテルがあって
道説かぬのに
触れもせで

分身の術には
いいこともあって
分身して
それが逃げたら
色白に

ダッチロールしてる
旅客機の中で
頑張っても
その頑張りも
揺れている

東雲(しののめ)に着いたら
ふるさとは青く
ねむさよりも
その小ささに
泣きそうな

伝えたいことなら
定型にせずに
目だけをみて
ふるえる顔で
言いなさい

 この日は20数首。分かち書きは、韻律を視覚的に見せるためには効果的だ。特に今日の上の句98は、17音で、575で読めるケースがある。57、また75調は、強くそこに収斂する力がある。その力に、あらがう、というか、利用して裏切ることで新鮮さを出すのが、字余り字足らず句割れ句またがりという技法であると言える。

 6/9 「75757」
残った分を食べており
もう友達は席を立ち
待つ人なくに

駅のホームのトラブルは
スタンガンなど配布して
(使ってみたい)

ストレージだよ人間は
東京なんておっかさん
容量ばかり

コアラという名英語だと
KOALAって書く
ひねりなし
 ※結句の音数を間違えている

暗闇からもにょきにょきと
避(よ)けむとするもにょきにょきと
なんだこれ
 ※結句の音数を間違えている

美女と野獣の、なんつうか
野獣のほうは、比喩じゃなく
なんでだよ感

ホースが踊る休日の
一瞬できた虹の中
おっさんキラリ

スコップをもつモグラの絵
物足りなくてサングラス
ヘルメットだろ

悲しい絆、復讐を
今でもおもういじめられ
あかい夕方

ガクアジサイの花の上
かみさまそっと載せてあげ
あっ落ち、耐えた!

孫に遺言、死ぬときに
ひまわりの種詰め込んで
だめだ、火葬だ

ぼくはあなたをえらんでも
あなたはぼくをえらばない
いけずですなあ!

 この日は30数首。この日と翌日の最終日は、不自由律短歌ではあるが「プログラムによる乱数」の定義を外し、不自由律短歌と短歌との、近似を探る狙いでテルヤが考えました。この75757は、句数、音数が同じなので、「5音7音の5句で構成された31文字歌」と短歌を規定すると、短歌と同じものになります。個人的な実感として、短歌とは「5音句からはじまって、7音句で終わる」という、始まりと終わりの感覚が、意外に大事に感じた。

 6/10 「5757577」
不定形な気持ちがあって俗だけどバレンタインとか利用して告白するのは楽しき思い出

何気なく歩いていても紫陽花はぼわっと置かれ水無月の鮮やかにして淡き思い出

ドット絵の少しレトロのプレイヤーキャラは疑問を持たざりき操られたるわれにあらずと

顔面のそのほとんどが角質の採食器官のくちばしを疑問におもうことのない鳥

学問は疑うことで信仰は信じることで神学は、「ながらも」という裳裾(もすそ)のあたり

何を信じざるかツバメの営巣の材料変わりゆくことのおのれを成せる材料もまた

バナナスタンドにバナナ吊られて当然に真っ直ぐでなくみな少し腹に力入れ足を前方に

さんざんに外をほっつき歩いても戻ってきたらその家が一番だなんて南極だもの

鳥の世界の伝説ですがあまりにも速く飛ぶので一揉みの炎と消えた神話のありぬ

この介護ロボットほんまむかつくわ優しいことだけ言いよるし蹴っても笑顔、蹴っても笑顔

その人は村の中から出てこれず村の外などろくでもないと村のことには詳しかりけり

当たったら死んじゃうようなスピードで乗り物がかけめぐる日のテーブルに肘ついてチーズ待つ

芸術のみやこパリパリアイス食い悔いはじめたら足らぬ世のよんどころなし千載具眼

凛とした、なんて言葉は借り物だ、鉄線描で描かれたような君が好きです、よく分からない?

 最終日。30首ほど。この日の不自由律は5757577で、形式としてはもっとも短い長歌形式と言える。つまり、短歌の57577が確定されるまえの、双子の兄のような、同じ和歌であったもの。なので、この日は、字余り 字足らず句割れ句またがりをありとした。この歌は、57577を内蔵しているので、(57)57577とするか、575(75)77として短歌として詠む詠み方と、長歌の、57/57/57/7という対句表現的リズムで詠む詠み方があったが、やはり短歌に寄せて詠むのが多かったか。

以上、本当は参加してくださった方の歌をあげたりもしたかったが、それぞれの作品の引用のスタンスがありましょうから、テルヤのだけとしました。

あらためて、意見や歌を寄せてくださった方に、感謝します。楽しく、勉強になりました。

2017年6月3日土曜日

2017年04月うたの日自選と雑感。

月が変わったら先月のうたの日の歌をまとめていたのだけれど、5月のアパシーでさぼったリング。しかしあの命名悪意あるよね。
これは毎年のことなのかもしれないけど、テルヤが観測するのは今年が初めてなので、どうもこの5月は、文学フリマや連休を機に、歌会が活発に行われるようになったようだ。また、それにともなって、歌会論も、みんながそれぞれの温度で、語るのが見えた。そういうテルヤも、昔の記憶をたよりに、わりと大いに語ってしまった。昔の話をとくとくと語る、これすなわち老害なり。

自選や自註など。

「いい◯◯」
荒れ果てて野良も隠れるいい畑地だったがショベルカー現れる

 ※誰にとってなにが「いい」のか、という歌ですね。

「市」
春の市で人はゆっくり渦となりあなたを探すひとりとなりぬ

「壺」
それほどの価値なき壺よ売れ残り埃積んでも壺として在る

「自由詠」
人生がループものって気づくってこのいとしさが解脱のことか

 ※先だってもツイッターでメタについて語ってしまったが、仏教における悟りというのは、幾分メタ認知をうながすような修行があるように思われる。解脱とは、輪廻を抜けだすことであり、輪廻を抜け出す、というのは、それが輪廻であると知ることだからだ。

「とうとう」
滔々と流れる河を見て育ちうとうとと愛を注(そそ)ぐ日を待つ

「部」
あなたから預かっている大切な部分がぼくのシーラカンスだ

「冥王星」
大切なものもほんとは見えるのに、冥王星の王子がニヤリ

「そもそも」
きみを好きな遥かなそもそも論をする、individualとは何かから

 ※individualとは個人、の意味で、これ以上divide(分割)出来ない、という、って、あれ、ここでそもそも論やっちゃうの?(笑

「極」
極楽鳥が首をかしげてわれを見る小声でひとつ訊ねてみれば

「糸」
夕方の多摩川は銀の糸となる河原を去ってゆくわれの背に

2017年04月うたの日自作品の30首

「馬鹿」
変なところにお茶が入ってむせる春どんなところか知らぬうましか

「仏」
焼失し伝らざりし仏典に救われし人もう今は無し

「絨毯」
黒と茶と黄色の冬の絨毯がしまわれて春休み薄寒(うすさむ)

「いい◯◯」
荒れ果てて野良も隠れるいい畑地だったがショベルカー現れる

「リュック」
あの橋のあたりが虹の足だった、リュックで走るきっと間に合え

「市」
春の市で人はゆっくり渦となりあなたを探すひとりとなりぬ

「壺」
それほどの価値なき壺よ売れ残り埃積んでも壺として在る

「哀」
この町の哀愁一手に引き受けてよれたコートにすかさず夕日

「耐」
人生論にしたくはないがこの桜も冬の寒さによく耐えたです

「自由詠」
人生がループものって気づくってこのいとしさが解脱のことか

「とうとう」
滔々と流れる河を見て育ちうとうとと愛を注(そそ)ぐ日を待つ

「部」
あなたから預かっている大切な部分がぼくのシーラカンスだ

「冥王星」
大切なものもほんとは見えるのに、冥王星の王子がニヤリ

「夕方」
いちご狩りツアーのバスが去ってゆき甘き香りの残るマサカー(massacre)

「後」
現代が終わるころには我々は彼らに後光を付け足すだろう

「ほくろ」
もうひとつ星をみつける、明け方のネイキッドなる白い宇宙に

「バスケ」
バスケ部がバスケの授業を手伝ってダルそうながらしっかりバッシュ

「戻」
田畑には戻らない街、芋虫を食べたことないスズメとおれの

「襟」
開(ひら)けどもひらけども汝(な)が胸襟に男の影が(オレ含め)ない

「ポスター」
うすぎぬの半裸の女体のポスターを貼りたき男を守れ現代

「ドクロ」
頭蓋骨も美しからむきみのため「ドクロ 保存」で検索をする

「麺」
人生で一番大きな買い物をしちゃったね、今日麺でいいよね

「1/100」
1/100ミリグラムにもならぬ歌の重みを語るぼくらは

「渡」
海峡をよっと渡ってきましたよ桜前線の尻尾見ながら

「そもそも」
きみを好きな遥かなそもそも論をする、individualとは何かから

「パクチー」
パクチーは罰だったのにぱくぱくときみはほんとにわたしのきみか

「島」
陸地にも海の向こうも行けぬまま多島海にてうずくまる岩(われ)

「バッタ」
生きてゆけるところがここにはありませんバッタは全身ミドリなんです

「極」
極楽鳥が首をかしげてわれを見る小声でひとつ訊ねてみれば

「糸」
夕方の多摩川は銀の糸となる河原を去ってゆくわれの背に

2017年5月24日水曜日

2015年4月の作品雑感。

4月というのは明るい季節で(もう五月だよ)、桜を中心とした植物の一大イベントがあります。桜の歌というのは、よくもまあ飽きないもので、今年もいくつか作ったし、2年前も、けっこう作っていたようです。

現世に薄桃色のエフェクトを無理くりかけたように桜は

見るたびに桜は歌になるという文化を深く知らぬ私に

春霞に桜があればなんというこの国はまだにっぽんである

上も桜下も桜の向こうから学生服が美しく来る

ライトアップ夜桜と夜の人の列その下に黒き水の流るる

かなしみは少しはあってかまわない飛花壮絶を眺めておりぬ 

店内も花びらまみれ、かすかなる水気を帯びて終わりゆくよし

花びらを拾い集めて少女にはいつかうとましからん盛りの

自分から一歩もたった一歩でも逃げられざりき、散りいる桜

1年に一週間ほど、というドラマ性には敵いませんな。

自選。

かなしみは少しはあってかまわない飛花壮絶を眺めておりぬ 

ひょっとして歴史をひとつ完全に更地にしたる跡地の重機

孤独とはいかなる罰か雀らのひとつ逃げればいっせいにゆく

自分から一歩もたった一歩でも逃げられざりき、散りいる桜

先輩は気付かなくても後輩はモールで頭を深々と下ぐ

前髪を何度もさわり片隅の承認欲に頬もゆるみつ

雨のため冷たく寒きこの夜を野良猫はおのが熱抱いて寝る

闌(たけなわ)は季節でなくて眼前をかく見るこころ、たとえば君の

馬車馬に生まれた馬は引くことと生きることとの区別なく引く

尊厳がひとりでに輝くように思っていたよ、錆びし鞦韆(ぶらんこ)

この花はたった自分の上だけをみつめる赤きチューリップかも

あまやかに侵食したる菌類の樹皮を覆ってやがては殺す

老いぼれた犬がゆっくり老いぼれた飼い主とときを超えたる散歩

エロがもつ救いと救いのなさなどをふと、まさか君に話したかりき

風のあといっせいに靡く見ておりぬ当然のように哀しいように

わがうちの差別意識をまざまざと否定肯定せずいわば、抱く

両手をねじりじゃんけんにここで勝つわれの未来を覗く、未来はひかり

2017年03月うたの日自選と雑感。

このところブログのアップもサボリ気味なのでなんとかせにゃならんと思いて。

短歌というものが、最終的には、ひとの心に残るとそれはすごいことで、自分がこんな歌を詠んだ、というより、あの人がこんな歌を詠んでいた、と覚えてもらったことが、ゴールなのかもしれない。

残るといいなあ。忘れてしまうような軽さで。

自選。

「春一番」
春一番とすれ違うとき耳元でよういどんっておれも聞こえた

「暖」
川のおもてを水鳥ひとつ浮いていて暖かき春の空腹な壺

「忘」
忘却と言ったってほら浴槽を湯があふれればあふれるものを

 ※6年目の3・11に。

「暦」
運命とたたかった日々がありましてずっと暦の下にいました

「羊」
体重の話でなくて人生は羊頭狗肉おなかをつかむ

「ハードル」
ハードルを飛び越えるときなんとなくプリマドンナの内面を見ゆ

「掃除」
水槽の掃除のためのヌマエビが空走るように泳いで楽し

2017年5月13日土曜日

2015年04月の60首と、ある人とのやりとり6首

現世に薄桃色のエフェクトを無理くりかけたように桜は

老人の背骨はたぶん耐えてきた孤独にじめりと曲がり縮みつ

見るたびに桜は歌になるという文化を深く知らぬ私に

春霞に桜があればなんというこの国はまだにっぽんである

上も桜下も桜の向こうから学生服が美しく来る

ライトアップ夜桜と夜の人の列その下に黒き水の流るる

かなしみは少しはあってかまわない飛花壮絶を眺めておりぬ 

店内も花びらまみれ、かすかなる水気を帯びて終わりゆくよし

ホールケーキをぶつけるような人類の破滅、そのとき白甘(しろあま)き顔

ひょっとして歴史をひとつ完全に更地にしたる跡地の重機

前や後ろに子供を載せて女らは男のおらぬ往来をゆく

孤独とはいかなる罰か雀らのひとつ逃げればいっせいにゆく

花びらを拾い集めて少女にはいつかうとましからん盛りの

自分から一歩もたった一歩でも逃げられざりき、散りいる桜

8ビットサウンドでわが仏をば慰撫したてまつりて日を終える

たばこ酒あまいものコーヒーよりも依存の強い妄想のあり

先輩は気付かなくても後輩はモールで頭を深々と下ぐ

ビン詰めの幸福論を聴いているそのビンのフタをまわさぬわれに

朝明けて街灯がまだ点いていしが今消えてひとつ忘れてゆくか

話したいことどもすべて腐(くた)れゆき手に付いている甘酸きにおい

寝不足でからだが少しぬくいので君の手ひとつに熱放ちたし

前髪を何度もさわり片隅の承認欲に頬もゆるみつ

ああつまり余生なのだと思いいたり口角をふたつみつあげてみる

枝先がすべてみどりに透きとおりこの木の春はかくおびえたる

雨のため冷たく寒きこの夜を野良猫はおのが熱抱いて寝る

絶海の孤島のゆえに光るほど思念は研がれここまで届く

先進国のワンクリックで生かされる命の名前いかなるならん

闌(たけなわ)は季節でなくて眼前をかく見るこころ、たとえば君の

日々懺悔滅罪として生くことのそれは喜ばないことでなく

馬車馬に生まれた馬は引くことと生きることとの区別なく引く

歌の起源に母子のことば、しあわせねあったかくっておいしくって

涙など流れることもないけれど寂しさで処理したりかなしみ

尊厳がひとりでに輝くように思っていたよ、錆びし鞦韆(ぶらんこ)

この花はたった自分の上だけをみつめる赤きチューリップかも

奇妙なる比喩で隠していることの水底(みなそこ)の貝は待つことが生

いつのまに「にへら」と笑う人間になるのであろう、遠くもあらぬ

あまやかに侵食したる菌類の樹皮を覆ってやがては殺す

掌(て)の中の飼鳥のいのち軽くして真にわれよりかるき重みか

今朝の夢の違う悩みを生きている俺のその後が知りたいが、無い

自転車の練習をする父と娘(こ)のしろあかしろの花水木まで

ぶどう畑の夕日の、懐かしいような変わらぬような顔でお前は

まがまがしい花が咲くかと思いきやするするぽんと野生のポピー

遠く離れて語る親への愛などはよどむべきにはあらぬと思えど

仁丹が多めに口に入りたる顔のようなる好感度にて

老いぼれた犬がゆっくり老いぼれた飼い主とときを超えたる散歩

カラマーゾフをちびちび読んでとぼけつつわが一族の血をば思えり

スローなる爆発破裂ことに春その植物のあいだを歩く

もう酒をやめたいオレにこの夜が飲ませたいのは何色の水

印象は黒鍵ひとつずれるならたちまち瓦解したる音楽

感情の水面揺らさないための水抜き、むしろそこは足そうか

生活と瓦礫が同じ材料であることを見て娘あかるき

エロがもつ救いと救いのなさなどをふと、まさか君に話したかりき

石楠花は誤用であるがなめらかな石のようなる光沢と思う

風のあといっせいに靡く見ておりぬ当然のように哀しいように

目立つゆえ孤立し攻撃にさらされる白いカラスは赦免のしるし

ふてくされながらも母の手を握り少年はぬるき現実に戻る

君は一人じゃないなんてことないじゃないこんなところで出会っておいて

(上の歌をめぐるある人とのからくり人形と恋の勝ち負けについてのやりとり)
  孤独とは何のからくり、山肌を流れる水に沿うて片栗

  もう一度パタパタぼくに来るためにそっと、つよく、息を吹きこむ

  右腕を巻いて抱く癖、キツいハグ、逃げるが勝ちの残れば負けの

  泣きっつらに恋の敗北、かつ孤独、からくり人形つついて倒す
 
  理不尽とは何処(いずこ)の婦人、奥の手の胸ポケットにいつから穴が

  孤独宇宙はかく淡々と進むべし倒れたままで歩く人形

わがうちの差別意識をまざまざと否定肯定せずいわば、抱く

言うけれどアンダーカレントまで行けば本心があるわけでもないし

両手をねじりじゃんけんにここで勝つわれの未来を覗く、未来はひかり