2015年11月15日日曜日

2012年12月の32首

母国語が同じなだけであったかと反論を書けど送信はせず

辺土にて夜ちびちびと舐めている孤独、朝には覚めるのである

自らは何も負わずに待っている革命、目玉焼きの底は焦げ

冷蔵庫以上冷凍庫未満の温度だと馬来の人に師走を伝えき

動物は家に閉じこめうきうきと雨季は植物ばかり楽しき

呑んだので無理ではあるが浜を噛む闇夜の波を見せたき夜更け

悲哀とか孤独で繋がりたかりしがはやばやと自死しやがった奴は

空想の悲哀をもいで歌を吐く擬似晩年の霧深からん

錆びついた我が実存にふつふつと泉涌くまで朝の祈りを

洗面所で大口ひとつ、朝なので身内の闇に光いれおり

原発にあらあらうふふ、推進や脱や卒にも微笑むばかり

空青く風は冷たし、幾たびの死を繰り返し此度も愚か

ことのはの一輪のため内側にまだ不可触の沼地をもてり

襤褸まとえば心も襤褸、さもなくば魂は裸にて屹立す

横たわりたがる身体を持ち上げて今日の終わりを終わるまで待つ

人間愛を歌えぬ咎を詩型とか世相のせいにしてもう師走

円熟と老化は同じ、みずみずしく未熟の脳を懐かしみつつ

つぶやきは蒼穹に満つはずもなくおぐらき溜飲下げて、さびし

壁のしみが魔仏となって一人(いちにん)をたぶらかすまで黙ってみおり

衰えて笑みなき師匠、生命の基(もとい)に不快の置かれしごとく

夢にあらわれ夢覚めてなお舌の上に続き流れたがるパルティータ

滅亡の日の浴槽に浮かびたる柚子の掬われざる一千夜

水平線の線を小指でひっかけて一気に啜って君を笑わす

二日酔いの脳が脈打ち人生は今が旬だと甘く囁く

あらあらはテンプレートの如く生き、追伸に個性らしき一行

コイン式駐車場には人の世ののちのごとくに風が回れり

昭和生まれに昭和が遠くなりゆくを突風が帽子飛ばして、追わず

人類に滅亡がわれに晩年が毎年ささやかれて微苦笑

死刑囚はおそらくはまず辞世から短歌を詠みて歌人となるも

おまえの中でおまえばかりが死にたがり塞いでいると夢で叱りき

始まりと終わりが寒い国にいて幸福とやらのこと思うなり

湧きあがる思念を抑え刑囚の記録を読めりおおつごもりに

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