2015年11月21日土曜日

2013年01月の31首

「ことよろ」
よろよろの足まで揮発する酔いの今年の決意もう置き忘れ

一年を描きつつ飲む日本酒の酔いては事をし損ずるかも

うたびとのくせにろくろく寿がずテレビの皮肉たのし、三ヶ日

肉体を物理が漸(やや)くほどきゆくひと日よ進め、心は進め

あと何度跳ねたる我か湯の面(おもて)叩けば鈍い音ひとつして

一句一偈を求めて走る修行者の風受けて鳴る袋のごとし

古き良き時代を尋ね結局は若さのことを時代とか呼ぶ

摘んだこと無くて七草、食材は購入すれば済む人生か

オンリーワンかつひとりじゃない想定の聴衆に漏れて孤独きわだつ

年古れば馬鹿も難し、冗談を書き込む前に少し数える

被災地の空にあまたの折鶴を描きし影絵のうその優しさ

本年は幾たび世界が滅亡し日本の終わりを聞くか想えり

多摩川にさらす赤貧さらさらに貧しき暮しのここだかなしき

勇気のない顔を照らしてキンセンカの暖色が我の内側を呼ぶ

バリシャリと側道の雪を楽しんで騒ぐ子供はかわいかるべし

雑巾のように勇気を絞りだしほぼキモさから始まるものを

古生代の爆発に似た心地して読めない子供の名を聞いており

寒い日に病みて動かぬかたまりよ、爬虫のごとき貌(かお)かもしれぬ

悲しいことはくるものなので楽しみを遣らねばならぬ、匙を混ぜおり

肝心の時に寝ている男にて人生舐めたまま死ぬもよし

国家ひとたび自我障害に陥ればぶつかりながら形をみるか

天球という言葉のせいで一枚のオリオンの下を帰途につくなり

罵って溜飲を下げている彼の耳の在り処を探しあぐねる

機械が回る前の未明の青色の町ぞ、今日また今日が来るなり

コボルトの魔法のようにこごえたる未明の町の我も青色

藁を編まぬ民族となりやさし手の心ばかりがささくれ立ちぬ

ユーミンのたいらな声の流れたるモールは宗教施設のごとし

鳥よけのCDを選ぶ数秒の季節にあった曲を探せり

寒椿の赤にかすかに積む雪の演歌を許すような楽しさ

薬しか効かぬポケットと知りながら言葉の力を探してもいる

首の裏に寂しさは載りたがるので上向いて肩を揺すって落とす

0 件のコメント:

コメントを投稿