スカラベが星を観るとうポエジーが学術となる21世紀
公正世界信念の外にはみ出して激流の天の川頭上たり
永遠に希望持たねばシシュポスの岩より軽きいじめと思う
ブロンズに輝く玉を佩きながら石の時代を措きしおほきみ
自転車のカワセミ号も錆びついてブレーキ音の響く川ぞい
ドーピングで剥奪されし栄光の後輪を手で回す、止まらず
返信のメールを消して書き直し角取ればそりゃ無難にもなる
手紙、電話、ファクス、メールと近づいて逢ってしまわぬまでが相聞
冷蔵庫にパンのシールを貼りしまま彼女は去りにけり、去りにけり
ともしびのまだしばらくは続くので暗きところに行かねばならぬ
第一歌の解釈あやしき万葉の菜摘ます君がかすみつつ笑む
グーグルアースにゲニウス・ロキも映されて蛇怒りつつ去っていくなり
衛星写真にコラージュされたふるさとの無人のくせに明るいおもて
よく言うとコンプレックスハーモニーそういう理由で君の隣に
情けない使命のごとし、ごう音を震わせて土砂を一日運ぶ
この席は窓の向こうに梅が見え図鑑に載らぬ鳥が止まれり
ケフェウスとアンドロメダの切手貼り届きし手紙の二つの意味ぞ
侵略的外来種として憎むべきかご抜け鳥のtweetを聞く
陰謀論の浮き出るメガネかけたまま毎日を歩き暗き足元
映画的演出のことは知りつつもこの方が心地よい歴史もの
ポップコーン取り続く指のふやけつつ塩キャラメルの娯楽を舐める
水車小屋の遠くに見える川辺にてオフィーリアの手のかたちを思えり
友を選ばば友から選ばれざる日々のバルで飲み干す一杯、二杯
水瓶座のぼれば乾季ようやくに終わらんとする異国の夜分
慈雨はじまりみるみる染まる土の色の雨とは何か土とは何か
打たれつつ思想は下から匂うべし冷たい雨が続くあいだに
貧しかった昭和を知らず名づけたる「維新」の声に亡霊さやぐ
百年を鎮まりかえる海はなく人間の声で無災をば祈る
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