2015年11月8日日曜日

2015年10月うたの日作品の31首

「重力」
あこがれは重力と思い来たりしが近づいて実は斥力(せきりょく)と知る

「ラーメン」
秘密基地でぬるき湯そそぎベビースターラーメンすする、うまさいまいち!

「ピアノ」
誰もいない体育館にしのびこみピアノを弾きに今夜も行くのか

「折」
主人(マスター)の心が折れてないかぎり駱駝はあるく、砂漠ゆく舟

「鈴木」
東京の職場にいつも買い来たる東京ばな奈、これが鈴木だ

「誰」
誰かひとりも一緒に嘆く人がいれば起こらぬ事件ばかりにみえて

「象」
象とても未来のことを考える誰よりも先にある嗅覚で

「ビル」
背も高く機能もすぐれたる者に場を譲るのを待つビルヂング

「画面」
画面、画面、画面に囲まれた部屋の消すとき急に鏡になるな

「筋肉」
武道家が隠れてみがく筋肉の天賦の才のような怪力

「笛」
仕事中の口笛を叱られて拗ねる前世がイタリア人のオレなのに

「暇」
にちようは暇か訊かれて暇と言う会いたいことを暇とよぶなら

「おでこ」
おでこ以上くちびる未満の関係をつき合った数に入れてしまった

「ドジ」
生命はドジっ子だから幾万種も生まれてはてへぺろと消えゆく

「失敗」
敵に当たり落ちゆくマリオが消えてすぐスタート地点に別のマリオが

「栗」
中身なきイガグリのイガ落ちており守りきれたか訊かないでおく

「見」
見ることで所有してゆく生き物のさいごの望みにふと、見られたし

「封筒」
差出人のない封筒を受け取って開ければたぶんもう戻れない

「困」
困難に総量なんてないよなあ、回避しながら生きてきたのに

「ポケット」
冬物のポケットにあのレシートがまざまざと別れは過去と云う

「ひげ」
なにもかもやる気をなくし部屋に寝てそれでもまあたらしきひげである

「蝶」
君の蝶がぼくにけなげについて来て気になる頃に消えてゆくのだ

「ジャム」
マレーシアの知人がくれしこのジャムの美味いけど何のジャムだか読めず

「結」
彗星は進むんじゃなく後ろ向きに落ちてると云う君こそ、結句

「別」
昼食のパスタが冷めていくんだが大事な話なので別にいい

「同級生」
流氷のみえる学校に赴任した同級生を訪ねて、おらず

「続」
ふさふさのネズミのおもちゃが気に入って噛んで叩いて愛撫は続く

「℃」
5000°Cの熱を包んで冷えている海王星の愛すさまじき

「はしご」
休憩中はしごで開けた缶コーヒーの置き場所がないしマジ降りにくい

「父」
4分の3を与えて無口なる建物のことを父とは思う

「四字熟語」
こんな時間に呼び出されても行くぼくも眠眠打破の買いおきがある

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