2015年11月14日土曜日

2012年11月の33首

キュレーターというフィルターが賢しらの言葉を語る、すぐ読み流す

死してなお成分のこす魂よほのおとなってなお饐(す)えており

夜行性動物の夜は明るくて視覚を剥いだ君うつくしき

印象派の印象という軽蔑の言葉を弟子に投げたかも師は

魂の懶惰懈怠をシンプルと呼んですずしく現代を生く

同じものをみているという気持ちさえ分かてぬほどには人とは孤独

絆とはみえるすべてを断ち切って未開の地にて惜しむまぼろし

しげしげといのちのかたち瞶(み)るほどにいびつでまいるが最後まで生く

僕は君の一介のコンテンツだが君を欲しがるコンテンツである

立冬を過ぎてじりじり陽光の燃える平日ランドスケープ

粉末状の魂をふんと吹き飛ばし自分のそれに水を与える

秋晴れの空青くしてわれひとりにあらずと思えど苦しかりけり

我もまた過去に属していくことをマーラーに先に言われて思う

理想という冷たき雨に濡れぬよう傘に隠れて首をすぼめて

一挙または時間をかけて世の中がこおるところへ転がってゆく

太陽の分からぬ曇り、憧れを失くしたようにきょろきょろとして

ママゴトの虚しさに似て公園のここのベンチに初めて座る

お前だけ大福吹雪の模様して寂しくないか遊具に雀

ちちははの衰えの為立冬の快晴の今日に謝意を渡せり

治るということとは違い、川べりを幼くなりし母と歩けり

同じ会話を繰り返す母の老年を笑って寄り添う父も老年

ぶつかって淀んでしまう戻り水のような住処で生きると云うか

急速に若さが白く落ちてゆく心地して頭掻く癖やめる

平穏を未来ものぞむ男らの怒りも笑いもあらぬ職場の

おそらくはまだ晩年にあらざれどさびしくなりにけりとは思う

スロープのあそこにいたのは僕だった、もうあの場所ごとないと思うが

冬眠は寝るばかりだし春先は痩せてもクマはクマなのであり

中年の危機はあやうく救いがたし便座で慟哭もないもんだ

茫漠の僕らの中で君の眉の輪郭だけは確かであった

一切の過去をたくわえ火曜日の脳は夕べに少し横たう

両親の夢は悲しも、真夜覚めてtumblr100枚見てまた眠る

楠緒子のひたいの白さ思いつつ空想の菊を投げし漱石

美しい弟子こそ道を開くべしいばらに面(おもて)傷つけられて

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