2015年11月28日土曜日

2013年04月の30首

善も悪もいや生い茂る律動の春とう舟にわれも揺れつつ

人の壊れに段階のあるを思いつつ真顔の母に笑顔を返す

もう少し白くてもいいこの街を高架橋から君と見ており

確率論のしわざのままでいたいから因果を云うと聞き流すなり

イヤホンのヘヴィーメタルのサウンドがバロックめく頃会社に着けり

絶句して桃を見ていた、過ぐ春の空気も光る風景にあって

「文学は突進せよ」のアジ遠く仮死状態の眉が引き攣る

茂吉忌は二月だったか、敗戦後葡萄を見ている老人を思う

レーゼドラマのような女性のジェンダーの口調で我を拒みてし人

クリックで分かり合えたる心地して釣り合わぬほどの孤独の生(あ)るる

浴槽に身を沈めふと幸福はあふれるごときことかと思う

落ち椿馘首のごとく無残なりし門前も掃除されて跡なし

マスクとは拒絶のかたち、ウイルスから花粉から匂いから社会から

景として君のピントはぼやけゆき青黛の眉のラインひとすじ

音楽の孤独の部分ばかり聴き薄青き朝をさみしく思う

いまひとつ掴めていない言説が承認されないことぞたのしき

セーヌ川に頭を突っ込む日本人の曲を聴きつつ目黒川越ゆ

貴種流離の花屋の娘が変装し悪と戦うアニメの世界

嘘をつく子供の目には臆病と怒りと怯えと優しさがある

校庭のなんじゃもんじゃの木の下で少年期ひとつ終わるを見おり

放課後の食堂の脇で延々と音階練習して青春期

苦しみを乗り越えて君の精神の様のごとくに深きホルンは

コンビニのポスターで知る定演の店長OB説の妄想

ここまでは来たのだけれどコンビニで一本煙草を吸うまでに決める

目の前に分岐コマンド現れてリスクを選ぶ心を量る

確信もいらぬ理詰めの手堅さで人間の玉が詰められていく

生命の系統樹には僕までの運ぶ決意が枝なしていて

アクセスの切れ目が縁の切れ目にて私淑とか格好つけてさびしき

一寸の虫にもあらむ魂のナノあたりから比率あやしき

虫眼鏡の焦点を過ぎて広がりぬ円錐形の淡き明るさ

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